「先日とあるタスクで、品質が良くなかったため、追加の作業を行ない、納品前に作り直しをせざるを得ないことがありました。追加で3か月半、不必要な工数がかかってしまったのです。
原因は期限に追われて作業がいい加減になった結果、1つ1つのやるべき仕事が完了しておらず、手戻りが発生してしまったことにありました。プロジェクトの途中できっちりやるという方向に舵を切っていればそんな問題はおきなかったはずです。
個人の小さなタスクであったとしても同様です。例えば資料のデータが1つ間違っていて、それで提出してしまうと差し戻しをされ、さらに他のデータも怪しいから見直せと指示される。こうして、無駄な追加コミュニケーションが発生してしまうのです」
大事なのは「一発で確実にしとめること」だ。1つ1つを手抜かりなくこなせるよう意識することで、作業を確実に進めたい。
木部氏はこれまでの経験から、仕事を速く正確に確実に行うためには、以下の6つのステップが重要だと説く。
1.仕事のゴールを決める
2.ゴールまでをいくつかのの作業に分解する
3.時間を見積もる
4.一番時間のかかる作業を見極める
5.依存関係を見極める
6.段取りを決める
「私がまとめた6つのステップには仕事ができる人になるポイントが多数含まれています。特に若い人はどの作業にどれくらい時間がかかるかわからない。わからないながらも、取りかかろうとしている仕事の全体感を把握する癖をつけることがまずは大切ですね。
必要な見積もり精度は、経験を積めばわかるようになってきますので、そのうえで時間が掛かる仕事を把握して、その予測が外れてしまっても次につなげればいいと思います」
日頃から仕事のステップを意識し、その質とスピードを高める努力をする。その努力の積み重ねが「仕事が速く正確にできる人」をつくっていくのだ。
<取材・文/HBO取材班>
【木部智之】
きべ ともゆき◯横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。日本IBMシニア・プロジェクト・マネージャー。’02年に同社にシステム・エンジニアとして入社。入社3年目にしてプロジェクト・マネージャーを経験。その後、’09年に役員のスタッフ職、’10年には最大級の大規模システム開発プロジェクト、中国の大連への赴任などを経験。現在も日本と大連で数百人のチームをリードしている