都心に住む高齢者は年々増加しており、山本氏もその潮流を次のように語る。
「’13年に総務省が発表した『住宅・土地統計調査』の調査結果を見ても、65歳以上の実に17%が賃貸契約で生活しています。しかし、オーナーは旧来の常識にとらわれ、指をくわえて若い世代が入居するのを待っているのが実情です。
東京都内23区に限ると、65歳以上で賃貸を借りようとした場合、借りられる部屋は全体の市場の中で1.3%しかないんですね。200件を見て、ようやく3件ほどが候補に上がる程度。これでは需要に合っていないのは明らかです」
今後、人口比率で4人に1人、ないしは3人に1人が高齢者になってくるのに、1.3%というのは時代に即していないと言わざるをえない。
なぜ、こうしたミスマッチが起こっているのだろうか。その原因を山本氏は次のように分析する。
「そもそもこれまで、65歳以上の世代が部屋を借りる慣習がなかったのがまず最大の要因ですが、もう1つ原因として挙げられるのが、高齢者に多い孤独死のリスク。一般的に孤独死は、物件価値を著しく下げるとされ、オーナーとしてもそのリスクを避ける傾向が強いんです。
しかし、時代は高齢社会。人口動態が変わりつつあり、高齢者の不動産ニーズは日に日に高まっています。そうした状況下であるからこそ、オーナーは高齢者に目を向けるべきです」
まだまだ高齢者に対して部屋を貸す事業者が少ないからこそ、今後のビジネスチャンスが眠っているというのだ。さらに、高齢者に貸し出すことにはこんなメリットもあるという。
「高齢者の特徴として、賃貸期間の長さが挙げられます。高齢者は一度、入居すれば長い人で10年、20年と住むことも珍しくありません。また、継続的に更新するため、家賃も同水準で継続できる点も見逃せない。
若い借り手が3年前後で入れ替わるのと比べれば、オーナーにとっては非常に好都合だといえます。こうした“優良高齢者”の借り手は、トラブルも少ない。あと、5年経てば、65歳以上に貸すのが当たり前になるでしょう」
さらに、前述した孤独死に関しても、保険会社や保障会社のサービスが手厚くなり、またIoTの発達もめざましくなったりと、近年ではそのリスクは減少傾向にある。
「これまでは人力で行なうしかなかった見守りや定期点検も、オンラインでの見守りサービスなどが普及し、その人的コストが大きく低下しました。遠隔地からでも、独り身の高齢者の孤独死を防ぐテクノロジーが発達していますし、今後、急速に伸びていくでしょう」