クリントン家暴露本のベストセラーに見る、米大統領選混迷の要因

クリントン家暴露本がベストセラーに

 そうした空気がよく分かるのが、ある一冊の本がベストセラーとなった現象だ。  『CRISIS OF CHARACTER』(著 GARY J. BYRNE)は、シークレットサービスとしてクリントン家に仕えた著者による暴露本。となれば、いかにもメディアは飛びつきそうなものだが、不思議なことにほとんどスルー。書評の類はなく、あったとしても、いかにこの本がインチキであるかを論じる記事。  たとえばニューヨークタイムズは、当時の著者の階級では、一挙手一投足を確認できるほどクリントン家に近づけなかったはずだとする反論記事を掲載した。内容についても、すでに聞き飽きたゴシップの焼き直しで、しかも大半はビル・クリントンとモニカ・ルインスキーの情事にあてられており、論評に値しない本だという評価なのだ。(参照:「The NewYork Times」)  確かに指摘の通り、著者とクリントン家の直接のやり取りはほとんどなく、ホワイトハウス内で起きた事件に対する職員同士の会話や、一般の読者には不要なトリビアで埋め尽くされている。その点では、言葉は悪いが“クソ本”と言われても仕方ないだろう。  それでも、興味深い記述もある。たとえば、夫婦喧嘩でビルに花瓶を投げつけたとか、職員を聖書の角で殴りつけたとかは、いかにも絵が浮かんでくる。客がいるときといないときとでは、職員に対する態度が全く異なり、「とっとと失せろ」とののしられたこともあるという。「使用人を家具と同じに思っている」とは著者の弁だ。  だがそうしたゴシップ的な興味以上に注目すべきは、ヒラリーの性格とそれによって生じる不都合を分析している箇所だ。
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ヒラリーに対して積もり積もった不信感
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Crisis of Character

ニューヨークタイムズベストセラー