だが、現状を見ると、その常識が行き先を決めかねているように思われる。最大の原因は、クリントン氏に対する不信感にあるのではないか。アメリカの有権者たちの間では、“クリントン氏に騙され続けてきた”との思いが根強く残っているようなのだ。
12日にはテレグラフ紙が「
The worst condition Hillary Clinton suffers from isn’t pneumonia, it’s dishonesty」(ヒラリーを苦しめているのは肺炎ではなく、彼女自身の不誠実さに他ならない)との辛辣な記事を配信した。つまり、今回病名の公表に至るまでの経緯と、私用のアカウントで公務に関するメールを送っていた疑惑や、モニカ・ルインスキー事件への対応は、本質的に変わらないというのだ。
演説中に咳き込むシーンが流れると、最初はアレルギーだと火消しに走る。だが、次に追悼式典を退席する段になると、突如として肺炎であることを認めだす。これは今に始まったことでなく、自らに問題がふりかかると、常にその場しのぎのウソで疑義を振り払ってきた光景が繰り返されてきた。
そのため、記者の囲み取材を受けないどころか、随行取材さえ許さない異常な事態が生まれる。第三者にディテールを抑えられては、次にウソをつくときのプロット作りに支障をきたすということだろうか。いずれにせよ、アメリカの有権者は夫のビル・クリントンが大統領となったときから、こうしたヒラリーのやり方に辟易しているのだろう。