その後レザの兄弟の墓があるシラーズのシャー・チェラーグ廟やヤズドを巡り、この旅の最終目標であるマシュハドへと辿り着いた。イラン観光の際に候補に挙がる街ではないのだが、街の中心には8代目イマーム、レザの墓のもとに造られたイマーム広場があり、60万平方メートルにもなる巨大な敷地に大小さまざまな広場とモスクが集まっている。礼拝の時間になると目測5万人程度の人間が中央広場に集合し同時に祈りをささげるのだが……ここで警備員に呼び止められ観光客は礼拝時間以降入場禁止との旨を伝えられた。「私はムスリムではないが、イスラムのことを学び共に巡礼の旅をしてる」と友人達が伝えると意外にもすんなりと入場が許された。
礼拝にきた5万人もの人々で埋め尽くされるイマーム広場。ここにただ一人の外国人として参加した筆者
その日、筆者はおそらくただ一人の外国人として何万人ものムスリムに囲まれながら礼拝したのである。イスラム世界ではメッカ巡礼を終えたものは尊敬の意を込めて「ハッジ」と呼ばれるが、マシュハド巡礼をしたものは「メシャヂー」と呼ばれる。筆者も今やシーア世界で「メシャヂー・ジュン」と尊称を戴く身になった。友人曰く、大抵こういう場ではカルバラーの戦いやガディル・フムなどシーア派イスラム史の重要な出来事が語られるそうだ。