築地移転までわずか。仲買人たちは何を思うのか

仲買人の勤勉な生活ぶり

 仲買人は現在では個人商店よりも仲卸会社に所属するサラリーマンが多い。築地では各組合による仲買人の労働環境の改善を進めたため、築地市場ならではの社会保険制度も完備している。個人的には、仲買人は一匹狼で行動し、朝に魚を卸して稼いで夜には一杯やっているイメージを持っていたがそうではないようだ。では、実際の仲買人はどんな毎日を送っているのか? 「仲買人の一日は長いよ。午前1時に起床し、午前2時半頃に事務所に出社。注文を集計して出荷数を把握して4時頃に店に出る。6時前からは直接買いに来るお客さんの対応。お昼までには片付けて弁当を食べ、午後1時ごろ事務所に戻り伝票や売上整理。翌日の仕入れ状況を確認し、会社を出る頃には午後3時になっている。年末はへたすれば夜7時になることもある」  朝の3時4時に競りが始まるのは市場では当たり前。もちろん個人によって生活に多少の差はあるが、一年で一番売上の高い年末に仲買人が忙しいのは間違いない。我々が年末年始に忘年会や新年会に奔走し、クリスマスだ、正月だと騒いでいる分だけ築地は忙しくなる。築地は庶民の楽しい時間を日々裏側で支える大切な存在なのだ。  世界でも築地市場の「築地」ブランドは名高い。水産物、青果物などの食材を各飲食店や生鮮店に提供しているが、特に水産物は世界最大級の取り扱い規模を誇り、全国や世界中から約480種の鮮魚や活魚、貝類、水産加工品が揃う。値段にすると、水産物だけで年に約4350億2千3百万円もの取り扱いになる(平成26年実績)。フランスのランジス、スペインのバルセロナなど有名市場もあるが、取扱高は築地の足元に及ばない。近年は中国など近隣国での需要も増え、ますますブランドは上がるばかりだ。  それに伴い築地では若手の人材不足を補うため休日や労働環境などの改善を行ってきた。ふつうの会社と同じ労働環境が整備されたという。20年前は休みが日曜しかなかったが、今では月に何回か水曜も休市になる。 「昔は肩が触れた触れないで喧嘩になったりもした。マグロ包丁を振り回して喧嘩する猛者もいたよ。今は暴力沙汰があると店が営業停止になってしまうので喧嘩はなくなったし、大人しくなったね。休みも増えたし保険も組合もちゃんとある。ここ20年で若い人が働きやすいように変わったね」
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「魚は既製品じゃない」
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