鳥貴族と塚田農場、「脱・ブラック居酒屋」を掲げるも思わぬ誤算

 ここからは筆者の実体験に基づく主観も入るが、塚田農場で普通に飲み食いするとだいたい3000円以上、4000円未満はかかる。安い焼肉屋の食べ放題などと競合してくる値段だ。とにかく安いところに行こうというときには選ばない。学生や若手社会人がそれなりにお金を使って飲み食いする際の選択肢には挙げられるが、絶対的な決め手には欠ける。カップルが行くところしても悪くはないが、ベストではない。  ユニクロのように原料(鶏)の生産・流通・販売を一貫して行う垂直統合モデルの導入や、地代コストを抑える代わりに店舗の内装・接客や宣伝にお金をかける。そんな一味違ったビジネスモデルの構築は巧みだったが、肝心かなめの「誰がどういう目的で店に来るのか?」というマーケティングが甘かったのではないだろうか。

不祥事が相次ぐ「鳥貴族」の実情

 では、一方の鳥貴族はどうか。こちらはマーケティングの面では文句のつけようがない。とにかく安くそれなりに美味しいものを食べたい人が対象だ。大都市圏の大学生が友達と飲むのを安く済ませようというとき、一番初めに想起するのは、主要なメニューが280円均一で、キャベツがおかわりし放題の鳥貴族である。  鳥貴族の売上高原価率は20%台で、エー・ピーカンパニーよりもさらに低く、ワタミの半分ほどである。  同社は「安さにこだわれる秘訣は従業員の酷使によるものではない」と、精一杯PRしてきた。新卒ページでは「日本一の、ホワイト企業をつくろう」と謳い、実際、平均給与は446万円で、エー・ピーカンパニー、ワタミ、大庄といった同業他社のどこよりも高い。 ⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=107308 「ただ焼くだけ」のような簡素なメニュー中心にしたことでオペレーションコストも抑え、店員に無理をさせないようにしているというのも同社のウリの1つだ。  しかし、そんな鳥貴族では今年に入って不祥事が相次いで発覚している。4月には、鳥貴族のフランチャイズ会社の担当者が従業員400人分のマイナンバー情報を流出させてしまう事件が起きた。  ドリンクサーバーに誤ってアルコール製剤の容器を接続してしまい、顧客にアルコール製剤入りの酎ハイを提供してしまった不祥事は今月起きたばかりで、まだ記憶に新しい。規模拡大のスピードに、従業員へのガバナンスが追いついていないのではないか。  決算書を読み解くと、この疑問に答えるヒントが隠されていた。
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鳥貴族の決算書から見えたもの
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進め!! 東大ブラック企業探偵団

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