マンガの主戦場は紙からアプリへ。作品性だけが求められる時代は終わった?

やはりノウハウの蓄積がある大手に分があるか

 当初、マンガアプリはこの3勢力が共存する形だったが、状況を大きく変えたのが大手出版社の参入。 「他業種のマンガアプリが1000万ダウンロードされるような状況になると、全盛期といわれた90年代半ばの少年ジャンプすら発行部数は650万部ですから、アプリやWebでマンガを無料公開して単行本で回収した方が効率がよいという打算が働きます。過去の人気作品の無料公開で読者を集め、持ち前のノウハウで新作も多く投入し、さらに電子書籍の販売までを行う複合的なプラットフォームを展開することで、他の勢力を凌駕する可能性があります」  現に、15年は出版社以外の業態からのアプリへの参入が見られず、業界関係者を驚かせた。これにはIT系の勢力が目的としていた二次利用を念頭にしたマンガ制作が、実は割に合わないと思い始めたのではと推測できる。『comico』で最も人気が高い『ReLIFE』が16年7月にアニメ化されるなど、一定の成果はあるものの、ヒット作をつくるのには非常に時間とコストがかかる。さらに、優れた人材はブランド力のある大手出版社に集中しやすいことも逆風だ。  つまりところ大手出版社のコンテンツパワーが他を圧倒しつつある構図だが、山内氏曰くそれは現代のマンガ産業を織りなす局所的な事象のひとつに過ぎないという。
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ただ読むだけじゃない、多様化するマンガの機能
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