前述したような効果を踏まえれば、RPAが既存の業務に大きな影響を与えることは容易に想像できる。
「2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは1/3の仕事がRPAに置き換わるという予想もあります。英オックスフォード大学でAIなどの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授らは2014年、論文『雇用の未来』の中で、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化される可能性が高いと結論づけています。
日本においては、経済産業省が2016年4月、『新産業構造ビジョン中間整理』において、AIやロボットなどの技術革新に対応できなければ、2030年度には国内雇用が735万人減るという試算を発表しました。
ただし、これらの数値をもって『自分たちが行っていた仕事が奪われる』と考える人がいれば早計です」
果たして、それはどういうことなのだろうか?
「確かに、RPAは、人間が対応していた業務を代行することはできます。特に、人間が実施している反復作業や大量作業などをまねすることは得意です。入力の正確性やスピードなどでは、人はRPAにかなわないでしょう。
しかし、いくらRPAが普及しても、人間が担うべき機能は必ず残ります。さらに、RPAの普及に伴い、人間に新たなスキルセットが求められるようになると考えられます。
RPA時代には、
業務を『実行』する能力から『理解・分析・設計』するスキルが重要になるでしょう。たとえば、
現状の業務にどの程度の効率化余地があり自動化が可能なのかといった『業務の分析・設計スキル』のほか、
RPAの適合性など『テクノロジーの理解・設計スキル』、さらに
『ユーザーのニーズの理解・分析スキル』などです。
見方を変えれば、RPAの導入が進むほど、これらの人材に対する需要も高まることになるというわけです。企業内での
RPA統括専門部隊の新設や、RPAの製作やリスクマネジメントなどを専門に行うサービス会社もこれから数多く誕生しそうです。雇用の創出にもつながっていくに違いないでしょう」