AI、IoT(モノのインターネット)、デジタル・レイバー(Digital Labor:仮想知的労働者)といったキーワードに触れる機会が増えている。これらに共通するのは、いずれも、機械学習などを含む認知技術を活用し、人に代わって業務を自動的に行うことだ。
最近ではこれらを総括するものとして「RPA(Robotic Process Automation)」という言葉が広がりつつある。RPAは「ロボット」とは言うものの、生産現場における物理的なロボットではなく、認知技術やソフトウエアツールを活用したものだ。
「RPAはこれまで人間のみが対応可能とされていた作業やより高度な作業を人間に代わって実施することができます。工場で産業用ロボットが製品を組み立てるように、バックオフィスにおけるデータ入力などをRPAによって行えるようになるんです。
RPAの大きな特長は、定型作業だけでなく知的・自律的な作業も自動化できることです。人間の指示にのっとった対応のみでなく、自ら学習してルールを作ったり、意志決定に必要な情報を自ら取得し適切な判断をしたり、人間の質問を理解して適切な回答をしたりできる点にあります。まさに『デジタル・レイバー(仮想知的労働者)』というわけです」
こうした『デジタル・レイバー(仮想知的労働者)』はどういったところに役立ってくるのか?
「請求書の処理や経費精算、申込書の入力・不備チェックといった定型作業の自動化については、すでにビジネスにおいて効果が実証されています。たとえば経費精算のチェックをRPAで行うと、100件(人間が行うと約200分)の照合作業が1分で済んでしまいます。
また、ある大手生保では、保険申込書の不備チェックのために、これまで200人が必要でしたが、RPAの導入により、それが十数人まで削減できたといいます」
これまで、業務コストを削減するためにはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどを利用し、人件費の安い国へ委託するのが一般的だった。しかし、最近では中国やインドなどの人件費が高騰し、その格差を利用したコスト削減が難しくなっている。また、コストを追求し新興国に業務を委託すると品質の確保が難しくなる。
RPAであれば国内で品質を担保できる。もちろん、スピードも速い。人件費格差や標準化を元にしたコスト削減は15~30%が限界だが、RPAを活用したコスト削減は40%~75%も可能とされている。最近になって、RPAが注目されている理由の一つがここにあるのだ。