気持ちよく入国審査を済ませるにはSNSのタグ付けなども気を使わねばならないのかも
実際にアメリカの入管では以下のような流れで手続きが取られた。
「通常の入国審査場から大部屋に連れていかれました。ほかに50人ほどの旅行者がいて、5つあった各ブースでひとりずつ念入りに質問されていました」
ここで待機させられている間は、スマートフォンやタブレットなどに触ることも禁止で、見つかると一時的に没収されてしまう。しかも、ほぼ法的に拘束されているも同然のため、トイレに行くことすら許可制になるという。
「私が呼ばれるまでに3時間近くかかったと思います。私の番になって席に着いたのですが、入国審査官が二人で対応してきて、一人は旅の目的や滞在期間などありきたりな質問をするのですが、もうひとりは彼自身が所有しているスマホを触っていて、突然フェイスブックの画面をこちらに見せてきました」
審査官は「これはおまえだろ?」と言う。しかも、Krazy-Kと呼ばれていることやどこのショップにいるかなど、すべてがお見通しの状態だったという。その後、鍵つきの個室へ連れていかれ、そこでは入国審査官二人がパソコンとスマホでフェイスブックをくまなく見ている。「これは誰だ」、「これはタトゥーショップだな」などとかなり細かいところまでチェックされた。
「私は、カネは取ってない、ただ勉強しに来ているだけだ、と言ったのですが、まったくこちらの話を聞きません」
そして、独居房に送られた。その際、私物――手荷物や携帯電話、ジャケット、さらに靴ひもやパンツの紐まで没収されたという。私物は帰国時にまとめて返してくれるが、完全に犯罪者扱いだった。
「何回か個室に呼ばれ、指紋をとられたり書類にサインしたり、一通りの手続きが終わってから自腹で帰国のチケットを購入しました」
あとは帰国便の時間まで雑居房で待機し、搭乗時間になると係官に連れられてゲートへ向かった。
どの国においても入国審査官には入国の可否を決める絶対的な権限がある。例え信頼度の高い日本のパスポートを所有していようが、入国ビザを取得していようが、審査官個人の判断で拒否ができる。極端な話、機嫌が悪くて単に気に入らないから拒否をしている可能性もあり、しかし誰もそれに逆らうことはできない。
今回のKrazy-KはSNSに足下を掬われてしまった。しかも、自分が書いたものではないSNSの投稿によって、である。
「フェイスブックは日本を出るときに消してればよかったのかなとも思いますが、タグ付けやほかの人がアップした写真で結局ダメだったのだろうとも思います。私の友人であるアメリカ人彫師も、ドイツでフェイスブックを見られて入国拒否されたことがあります。オーストラリアに行ってダメだった友人もいます。フェイスブックって実名登録が当たり前じゃないですか。タグ付けなどで必ずどこかで繋がってしまい、私も友人もすべてがバレてしまったパターンです」
友だち申請やタグ付けなどをよく把握しておけば問題解決できそうだが、交流が広がれば広がるほど本人がどうこうできるものではなくなる。最近は写真を自動判別して候補者名を挙げてくるほど画像処理の精度も上がっている。特にアーティストだとファンも含めれば繋がりが数千人にもなる。はっきり言って防ぎようがない。
恐らく今後もこういった理由で入国拒否を受ける人が増えていくに違いない。海外旅行好きや国際的なビジネスマンは今後SNSの使い方をよりシビアに考えなければならないことをKrazy-Kのケースが示しているのかもしれない。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NaturalNENEAM)>