参院選の結果に絶望して、途方にくれています……
2016.07.14
【石原壮一郎の名言に訊け】~円谷英二
Q:このあいだ選挙があったけど、「この人を絶対に当選させたい!」と思って全力で応援していた候補は惨敗してしまった。あんな奴らばかりが当選するなんて、そいつらに投票した人たちは何を考えてるんだろう。日本はいったいどうなってしまうのか、不安で心配で仕方ない。まっとうな主張が届かない無力感、絶望感に包まれている。いったい俺は、どうすればいいのか……。(神奈川県・29歳・フリーター)
A:どの選挙のことを言っているのか、どういう人を応援していたのかは書いてないし、あえて曖昧にしておこうと思いますが、何はともあれお疲れさまでした。今日は久しぶりに喫茶「いしはら」を開店しました。近所でゲイバーをやっているウメコさんが、さっそく涼みに来てくれています。ウメコさん、若者がこんなこと言ってますが。
なによ、暑いのに勘弁してよ。私、体型的に暑さに弱いのよ。まったくもう、暑苦しい相談ね。「どうすればいいのか……」ってウジウジ言ってるけど、あんたが「こうしよう」と思えば、そのとおりになるの? ならないわよね。どうせ「考えることが大事だ」とか「変えていく努力を続けなければいけない」とか言うんでしょうけど、そうやって恥ずかしげもなく決まり文句を平気で使っている時点で、何も考えてないことが見え見えなのよ。
暑いから、どうすればいいかさっさと教えてあげる。まずは、いい歳してフリーターやってないで、ちゃんと働きなさい。「政治に関心を持つ」っていうもっともらしい逃げ場所に頼ってるんじゃないわよ。自分の仕事に全力で取り組む、毎日を一生懸命に生きる、親にせよ友達にせよ仕事相手にせよ縁があるすべての人ときちんと接する、それがあなたのやるべきことなの。自分ではどうしようもないことを心配するのは、ただの現実逃避よ。そのくせ「俺は意識が高いけど、ほかの奴はバカだ」とか思えるところが、またタチが悪いわよね。
話は飛ぶけど、今年は「ウルトラマン生誕50周年」だって知ってた? 私、大ファンなのよね。あんただけじゃなくて、右も左も真ん中も、政治の話をすれば偉いと思っている人たちに、ウルトラマンの生みの親の円谷英二さんのこの言葉を贈るわ。
「天から降ってくるのを待つのではなく、自分の力で作り上げることを喜び幸せとしなさい」
円谷さんったら、ウルトラマンは天から降らせたくせに……って、そんな話じゃなくて、仕事や作品づくりの話をしてるんだけどね。まあでも、地球を守るのは天から降ってくるウルトラマンじゃなくて、地球にいる人間たちだっていう考え方は、あのシリーズの根底にあったかも。そうそう、来年「生誕50周年」を迎えるウルトラセブンのキリヤマ隊長も「行こう! 地球は我々人類、自らの手で、守りぬかなければならないんだ!」って言ってたわね。
そりゃ政治は大事だし、無関心がいいとはあたしだって思ってないわよ。でも、政治がどうであろうとどんな世の中になろうと、いちばん大事なのは「自分がどう生きるか」「自分が毎日をどう過ごすか」なんじゃないの。SNSとかで政治的な話題を嬉しそうにアップしている人たちって、虎の威を借る狐臭いっていうか他力本願体質っていうか、そう見えちゃうのよね。あら、ごめんなさい。おかまが偉そうなこと言って。
【今回の大人メソッド】
政治に関心を寄せたり意見を持ったりすることは、文句なしに「正しい」とされています。それ自体は「正しい」かもしれませんが、ちょっと油断すると、見栄の道具にしたり自信のなさを投影したりといった「悪用」をしてしまいがち。素直に真面目にありがたがるのではなく、眉に唾をつけて疑ってかかるぐらいのほうが、有益に付き合えるでしょう。
【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。
いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
文句なしに「正しい」ことは疑ったほうがいい
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