タイ在住ライターが、パクチーブームの日本で「カオマンガイ」を食べて気付いたこと

カオマンガイは「米を食べる」料理

 タイ全土にはカオマンガイ有名店が無数にあり、何十年も続いている名店も多い。  バンコクにもオススメのカオマンガイ店はたくさんあるが、ぜひとも一度試してほしいのはタイで最も高いとされるカオマンガイだ。それは世界的に知られた歓楽街パッポン通りの目の前にある「モンティエン・ホテル」にある。1階の奥にあるコーヒーショップで供され、1セットが330バーツ(約1030円)もする。これは相場の8倍の値段だ。  値段が高い分、量はかなり多い。普通のカオマンガイひと皿では日本人成人男性だともの足りない。このホテルのはほぼ1羽の半身はあり、普通のカオマンガイの5皿分以上(米は2皿分程度)はある。肉は脂がしっかりと乗っているし、好みで選べる4種類のタレもつく。値段も高いが、味もトップクラスなので満足度は高い。  カオマンガイは単純でありながらピンからキリまで揃っており、いまだに知られていない名店もある。カオマンガイの店だけで1冊のガイドブックができるほどなのだ。  そして、このカオマンガイについても、日本人とタイ人の間には「楽しみ方」に差があった。  日本人はカオマンガイの善し悪しを鶏肉とタレで判断することが多いが、タイ人は米の状態を見る。カオマンガイを直訳すると「鶏の脂ご飯」。タイ人にとっては名称通り米がいかにおいしいかが決め手となるようだ。そのため、日本人がおいしいと思うものとタイ人がおいしいと思うものには若干乖離がある場合もあるのだ。  いずれにせよ、カオマンガイはシンプルで奥深い。それゆえ、米やタレ、鶏、スープとそれぞれに様々な個性を出す必要がある。食べる側にも作る側にもチャレンジ精神に溢れた逸品と言える。  それにしても、パクチーの食べ方といいカオマンガイといい、タイと日本では微妙に差があるのも面白い。しかし、山盛りのパクチーを食べるなんていうのは、タイ人にとっても新鮮だ。日本からタイ人にパクチーの新しい食べ方を教えてあげるというのもおもしろいのではないかと思う。タイ人にはない発想なので、驚かれるに違いない。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会