シリア拘束中の安田純平さんを救出するカギ

交渉人らの言葉は慎重に捉えよ

 拘束する側は、人質がどんな人物なのかをまず知りたがるだろう。  実際、安田さんがシリアに入る直前に私とフェイスブックのメッセージアプリでやり取りをしたメッセージは、ずっと「未読」のままだったが、今年4月に確認したところ、そのやり取りが閲覧されたことを意味する「既読マーク」が残されていた。安田さん本人が閲覧しているとは考えにくいので、拘束犯の関係者などが見ている可能性が高い。犯人側は、安田さんのSNSやメールに一通り目を通し、容疑を裏付ける証拠がないか調査しているのかもしれない。同時に、日本国民や政府の動きなどもSNSなどを通して確認していることだろう。  交渉人らの情報によれば、安田さん救出の期限は写真が公開されてから1か月。今月の30日頃までとなる。ただ、こちらから強引に交渉に走ったところで事態が好転するわけではない。というのも、3月に公開された動画でも今回の画像でも、拘束犯側からの要求は一切ない。「1か月」、「身代金」などの言葉は交渉人側からの情報に過ぎず、ヌスラ戦線側が安田さんにそれらの言葉を発信させたわけではない。  日本政府が昨年、後藤さんと湯川さん救出のために身代金を支払わなかったことは周知だ。もしISに引き渡すという情報が本当だとすれば、ISは何の利益にもならないような日本人人質をヌスラ戦線から買い取るか、もしくは自分たちが持つ捕虜と交換することになる。利益が見込めないような取引を敢えてするだろうか。  今後何かしらの動きが見られても、交渉人らから発せられた言葉は慎重に捉える必要がある。彼らが本当にヌスラ戦線の言葉を代弁しているかどうかさえも確かめることができていない。自称交渉人らの発言を政府に身代金の支払いを要求する日本人ジャーナリストもいるが、我々が騒ぎたてるほど犯人側を刺激してしまい、安田さんの身は危険に追いやられるばかりだ。交渉人を通さず、直接犯人側と対等な立場で話し、安田さんの無実を証明すること、そして身代金以外の別の方法を探ることが、安田さん救出のために重要だと私は考えている。 <取材・文/鈴木美優 Twitter ID:@lailasuzuki> ‘90年生まれ。大学在学中の’13年​夏に初めてシリアを取材。卒業後の’14年春にはヌスラ戦線に密着取材するなど、独自のコネクションを築き中東情報を発信している。
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