最終的に〈総工費は55億8100万ドル(5916億円)〉となった。受注した時の見積額と比較して、その差は23億8900万ドル(2532億円)となるが、その内の〈4億6500万ドル(493億円)は既に運河庁では支払うことに合意〉している。よって、未払残金となる19億2400万ドルを(2039億円)をGUPCは運河庁と交渉して行く方針だ。
円満な解決を望んでいるが、双方で合意に至らない場合は、先ず紛争解決委員会(DAB)にて解決を試みて、それでも合意が見つからない場合は米国マイアミにある紛争仲介裁判所に訴える意向であるという。サシールでは〈この未払残金の内の10億ドルは運河庁が負担することはないであろう〉と内心考えて、強引に解決策を模索することを控える方針でいるようだ。(参照:「
OK diario」)
サシールがそのように考えているその背後には、パナマには〈今後4年間に190億ドル(2兆140億円)をインフラ整備に使う計画〉があり、サシールはそこでの受注を期待しているからだ。
そのひとつが〈運河に架ける第4の橋で、総工費10億ドル(1060億円)で、韓国の現代と組む予定にしている〉という。そしてパナマ市内で〈総工費30億ドル(3180億円)の地下鉄第3ラインの建設も計画〉されている。それには勿論、スペインでサシールのライバルACSも入札に参加するはずである。ACSは運河拡張工事の入札でサシールに負けた経緯がある。(参照:「
OK diario」)
<文/白石和幸 photo by
Roger W via flickr(CC BY-SA 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。