『ロンドンにイスラム教徒の市長が誕生』――その選挙戦に見るロンドン市民の思い

箱崎日香里

サディック・カーン氏の公式サイトより

 去る5月5日に行われたロンドン市長選で、与党である保守党の対立候補ザック・ゴールドスミス氏を破り、労働党のサディク・カーン氏が当選。ロンドン史上初となるイスラム教徒の市長が誕生したとして、大きな注目を集めた。

 欧州では昨年から、フランスとベルギーでイスラム過激派によるテロが相次いだ上に、シリアなどからイスラム教徒を多く含む難民の欧州への大量流入が問題になるなどの出来事から、排外主義やイスラム教に対する警戒心の高まりが取り沙汰されている。

 そうした世相に反するようなこの歴史的選挙結果に対し、市内での世論は意外にも概ね好意的なようだ。カーン氏自身が当選演説で語った「ロンドンは恐怖より希望を、分裂より結束を選んだ」という発言は瞬く間に各主要メディアのヘッドラインを埋め尽くし、ソーシャルメディアでも大量にシェアされた。

 しかし、これを「ロンドン市民がイスラム教徒をリーダーに選んだ」というのはややミスリーディングかもしれない。ロンドン市民の実際の意見を聞いてみると、彼らの多くの実感はどちらかというと「選んだリーダーがたまたまイスラム教徒だった」というものに近いようだ。この背景には、世界有数の国際都市であるロンドンの現状と、今回の選挙戦での両候補の戦略の違いが大きく関わっている。

次のページ 
ネガキャンが墓穴を掘った対立候補

1
2
3
4
ハッシュタグ
4
5
関連記事
6
7