ペーミャ・ニエト大統領は、警察とカルテルの癒着から捜査が進まないという現状を前に警察組織も中央政府が一括してコントロールするように編成し、また必要とあらば警察ではなく軍隊を派遺して取り締まりを強化させる方向に進んでいる。
しかし、それが実際に成果として現れるにはまた時間がかかる。例えば、2014年9月に失踪した43人の大学生の事件の解明は一向に進んでいない。犠牲者の家族は、事件発生から1年後の昨年9月にニエト大統領とついに会見することが出来て、検察側が提出した事件の報告書には誤りが多いことを大統領にも指摘した。そのあとの家族の記者会見の席で、彼らは〈「これまで国は何も我々に提供してくれていない。唯一これまで貰ったのは心理的なショックだけだ」〉〈「我々は大統領の靴の中のひとつの石ころになることだ」〉と述べた。それは、そうすれば大統領は歩く度にこの事件のことを思い出してくれるはずだという僅かな願いを込めての比喩だ。また政府の調査関係当局がまとめた事件の調査報告書は誤りが色々とあることも彼らは指摘した。(参照:「
UNIVISION」)
ペーニャ・ニエト大統領の支持率もこの事件の解明が一向に進んでいないことが鮮明になってから下降の一途を辿っている。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
<文/白石和幸 photo by
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