直接通報があった場合、「Soi Dog」職員やボランティアが野良犬を捕獲し、狂犬病のワクチンを接種する。その後、ケースによってはシェルターに引き取ったり、元いた場所に帰す
それまでタイの飼い犬に対する罰則はかなり緩かった。1963年に施行された動物に関する法律は与える餌に関係した法律で、特に豚や鶏などの食肉用の家畜に対するものであった。タイは食品衛生関係の法律は案外に厳しく、安全な食品を作るための法律として施行され、ペットに対するものではなかった。その後、1992年になってペットが他人に迷惑や危害を加えた場合に飼い主は6か月以下の懲役か1万バーツ(約3.3万円)以下の罰金、もしくはその両方というものが施行されたが、虐待したり捨てても罰せられることはなかった。
そして、2014年12月27日になってやっと動物虐待防止および動物愛護法が施行された。この法では理由なく殺害したり虐待すると2年以下の懲役か4万バーツ(約13万円)以下の罰金、もしくはその両方が科せられる。不適切な飼い方をしたり、放置、捨てるなどをしても4万バーツ以下の罰金となる。
最近になってペット飼育に関する環境はタイは一応前進したのである。
ベトナム・ハノイにある犬肉の店。現地では精力のつく肉として男性を中心に人気があるようだ。しかし、誰でも好んで食べるわけでもないという
タイでは野良犬の問題には狂犬病のほかに食用の問題がある。街中の野良犬を回収業者が捕獲し、ときには飼い犬を拉致してトラックに詰め込む。それを主にベトナムへ輸出している。ベトナムの首都ハノイなどでは街中で犬食ができる食堂がどこにでも存在し、常に賑わっているほどである。
犬は屠殺する前にわざとストレスを与え、アドレナリンのような分泌物を出させる。すると肉がおいしくなるのだそうだ。そのためか、タイで捕獲した犬はトラックに積み込んだ檻にぎゅうぎゅう詰めにされる。早く救出しないと大半が圧死するほどの量で、犬好きでなくとも許しがたく思える残酷な光景となる。
タイでは犬を食べる習慣は東北地方、サコンナコン県のほんの狭い地域にあるだけで一般的ではなく、そもそもタイでは食用としての犬肉自体が認められていない。タイ警察も情報をキャッチすれば摘発に動く。その際に大きな役割を果たすのがタイ国内にあるNGO団体だ。捜査への協力はもちろん、救出した犬の保護も行う。警察が摘発したところで、野良犬たちは結局行き場がない。そんな犬たちの最後の望みとなるのがNGO団体なのだ。