それでも安倍は衆参同日選を狙ってくる――【草の根保守の蠢動 特別編】
「緊急事態条項『極めて重い課題』熊本地震で官房長官」『日経新聞』2016年4月16日)
「草の根保守の蠢動」ではこれまで、日本会議界隈—とりわけ「日本政策研究センター」—が、「緊急事態条項」に長年こだわってきたことを指摘してきた。
安倍首相の筆頭ブレーンと呼ばれる伊藤哲夫が率いる「日本政策研究センター」が主張する「改憲アジェンダ」の筆頭は、「緊急事態条項」だ(連載17回)。
日本会議の改憲運動用フロント団体である「美しい日本の憲法をつくる会国民の会」の総会で具体的に述べられた改憲目標は「憲法9条2項」 で は な く「緊急事態条項」と「家族条項」であり、安倍首相はこの大会に賛同メッセージを寄せていることも本連載でご報告した。(連載24回)
こうした経緯を踏まえると、安倍首相が国会の答弁でさえ「自分の任期中に改憲を成し遂げたい」(参照:(「安倍首相『改憲、在任中に』18年9月までを念頭」『朝日新聞』2016年3月2日)と繰り返し強調する「改憲」の目標はとりもなおさず、「緊急事態条項」であると考えるのが自然だろう。冒頭に挙げた菅官房長官の記者会見発言も、この流れを踏まえたものに違いない。
こうした安倍首相の改憲にかける並々ならぬ決意と、消費税増税延長の議論を踏まえ、各方面から「7月に予定される参議院選挙に合わせ、首相は衆院も解散し衆参同日選に持ち込むのではないか」との憶測が飛び交うようになった。
「今夏の参院選は衆参同日選になるだろう」という観測は、筆者も同意する。むしろ、2014年年末頃に「2016年の参院選は衆参同日選になるだろう」と予測を立てたことが、日本会議の研究に没頭したきっかけの一つでさえある。だからこそ、日本会議の本体である「日本青年協議会」がその機関紙で「改憲へのカウントダウン」を始めたことに驚愕したのだ(連載6回参照)。また、しばらく連載掲出を休止し、本連載の書籍版『日本会議の研究』(扶桑社新書)の出版を急いだのも「安倍首相は、衆参同日選に持ち込むつもりだ」という読みがあったからに他ならない。
しかし、筆者の「衆参同日選に至るだろう」という読みは、目下メディアを飛び交う「消費税増税延長の是非を問うため」や「衆参両院で改憲に必要な3分の2を取るため」を根拠にした読みとは根拠を異にする。どうも、衆参同日選挙は、(安倍首相から見た場合)もっと切実な「動かしがたい」ものによって要請されているように思うのだ。
やはりというべきなのだろうか。
熊本での地震を受けて政権側は、「緊急事態条項が必要だ」と発言しだした。(参照:
安倍首相が衆参同日選に固執する理由
『日本会議の研究』 「右傾化」の淵源はどこなのか?「日本会議」とは何なのか? |
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