通信が途絶えた天文衛星「ひとみ」。原因不明の高速回転状態にあると判明

X線天文衛星「ひとみ」 Photo by JAXA/池下章裕

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月8日、3月26日以降通信が途絶えているX線天文衛星「ひとみ」について、最新の状況を報告する記者説明会を開催した。  現在まで「ひとみ」との通信は回復しておらず、なぜトラブルが起きたのか、現在どういう状態にあるのかは、ほとんどわかっていない。一方、地上からの観測で、衛星本体が高速に回転している可能性が高いことが新たに判明し、JAXAでは衛星の姿勢制御系に異常が起きたと推定して、調査を進めている。

異常発生から機体の分解、そして異常発覚までの流れ

記者説明会の出席者。常田佐久・宇宙科学研究所長(中央)、久保田孝・JAXA宇宙科学プログラムディレクタ(左)、原田力・JAXA追跡ネットワーク技術センター長(右)

 今回の説明会では、最新の調査状況のほか、以前の説明会で発表された「異常発生後に4回の電波を受信した」というのが実際は間違いで、正しくは3回だったことなどが発表された。ここで改めて、これまでの経緯を整理しておきたい。  「ひとみ」は今年2月17日に宇宙へ打ち上げられ、搭載機器の立ち上げや調整を経て、本格観測へ向けた試験観測を行っていた。しかし、その最中の3月26日の4時10分ごろ、「ひとみ」に何らかのトラブルが発生し、姿勢が乱れる事態が発生した。  そのことが発覚したのは、同日16時40分のことだった。このとき、JAXAが「ひとみ」と通信しようとしたところ、不通になっていることが判明。そして26日5時49分から9時52分までに3回受信していた「ひとみ」の状態を示す一部のデータを分析したところ、前述の姿勢が乱れていたことが明らかになった。  さらに米軍の観測によって、10時42分前後に何らかの理由で機体が分解し、多数の破片が発生したことも明らかになった。後にJAXAも独自にこの事象を確認している。  その後、同日の深夜と翌27日の未明、28日の深夜にそれぞれ短時間ながら衛星からの電波を受信している。ただし、これは単に電波が届いただけで、衛星の状態などを示す意味のあるデータは受信できなかった。以降、4月8日まで電波は受信できていない(なお、以前の発表では29日の未明にも電波を受信できたとしていたが、その後の調査で誤りであったことが明らかになった)。  現在、JAXAの手元にある衛星のデータは、26日5時49分から9時52分までに得られたものが最新である。つまり、衛星が分解する約50分前までのものしかなく、さらに運用上の都合で、このデータには衛星の状態の一部しか含まれていない。この限られたデータから、「ひとみ」の現状や異常の原因を推定することは難しく、JAXAではとにかくまずは通信を復旧させ、異常発生後のより詳しいデータを取得することを目指し、対応にあたっている。
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「すばる」望遠鏡が「ひとみ」を撮影
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