砂問題で難航中のサウジ高速鉄道。建設を請け負うスペインのコンソーシアムは内部分裂状態に

ライバル会社トップがリーダーになり不協和音が加速

 スペイン政府がコンソーシアムのリーダーCEOに任命したのはスペインの大手建設会社FCCの出身でリヤドで地下鉄建設工事を指揮した経験をもつサンティアゴ・ルイス氏だった。彼はサウジ側のアブドゥラ・アル・ムクベル運輸相を良く知っていたということも彼が選ばれた理由でもあった。  しかし、FCCはもともとOHLのライベル企業だ。OHLが、FCCで勤務経験を持つルイス氏に素直に従う意思は見せない状態が続いているというわけだ。  機関車、車輌、それに関係した設備や器機を生産する3社Talgo、Renfe、Adifは建設工事が終了したあとも12年間のメインテナンスサービスを続けねばならない。即ち、その期間の砂の問題はこの3社で解決せねばならないことになる。一方で、現在問題を提起しているOHLは建設工事が終了すれば引き揚げることになっている。  巡礼地メッカとメディナを結ぶAVEは450kmを走行せねばならない。117kmから227kmの地点の100km間が砂漠の砂の影響が最も強い地点とされている。そこでは〈1mごとに年間で15tの砂が堆積する〉と予想され、運行に最も危険な区間だという。Talgo、Renfe、Adifはこの砂の除去作業に12年間付き合わされることになるのかもしれない。 <文/白石和幸  photo by juls26 on pixabay(CC0 Public Domain )> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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