米雇用統計、OECDの中間経済見通し、G20と大きな経済イベントが立て続けに終わった流れ受けて、今週および来週は、欧日米の順に、中央銀行の会合が続く。今週は3月10日の欧州中央銀行(ECB)理事会、来週は3月14~15日の日銀金融政策決定会合が、3月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。中央銀行の決定事項が、株式市場の動向を左右することになりそうだ。
【欧州中央銀行(ECB)理事会(3月10日)】
2016年1月21日、欧州中央銀行(ECB)理事会において、ドラギECB総裁は、「下振れリスクが再び増大」していることから、3月10日開催予定の次回理事会で「金融政策スタンスを見直し、再評価する必要が生じた」として追加緩和を示唆した。1月21日時点の下振れリスクとは、金融市場の混乱、原油安、中国など新興国の経済減速を背景にユーロ圏経済への逆風が強まっているとしていた。ドラギECB総裁は、金融政策手段をどこまで活用する用意があるのかに「制限はない」と発言し、政策に手詰まり感が出ているとの懸念を一蹴している。
12月理事会の追加緩和決定については、より大胆な追加緩和を期待していた市場の失望、すなわち、株安を招いたので、3月は市場の失望が無いような形での追加緩和が市場関係者から期待されている。
ECB下限政策金利である中銀預金金利の現行-0.3%からのマイナス幅の拡大、国債等の資産買入れプログラム(APP)現行月600億ユーロの買入れ額の拡大、買い入れの前倒し、買い入れ期間の延長などが、追加緩和のオプションになりそうだ。
【日銀金融政策決定会合(3月14~15日)】
マイナス金利付き量的・質的緩和政策が2月16日から開始され、民間銀行が日銀に預けている一部の資金に対して、マイナス0.1%の金利が適用された。マイナス金利導入により、国債の利回りが低下し、3月7日時点、10年国債までマイナス金利となり、30年国債も+0.72%という低い利回りとなっている。したがって、マイナス金利導入により、イールドカーブ(利回り曲線。償還までの期間=残存年数の異なる金利=利回りを線で結んでグラフにしたもの)全体を押し下げるという効果だけは確認される。果たして、予想インフレ率が上昇し、予想実質金利(=名目金利-予想インフレ率)が低下するかどうか?
3月4日、日銀の黒田総裁は参議院予算委員会で、マイナス金利政策を加えた今の金融緩和策によって2%の物価安定目標は早期に実現されるとして、現時点でマイナス金利の幅を拡大する必要はないという考えを示した。黒田総裁は「物価安定目標をできるだけ早期に実現するために必要があれば、量・質・金利という3つの次元の手段を活用して適切に対処していきたい」と述べ、必要があれば追加の金融緩和も辞さない考えを改めて示した。
3月の金融政策決定会合で追加緩和がおこなわれるかどうか?参議院予算委員会で「マイナス金利の幅を拡大する必要はない。」と黒田総裁が発言したからといって、3月の金融政策決定会合で追加緩和がおこなわれないと断言することはできないが、2%の物価目標にコミットする姿勢がマイナス金利導入により示されたので、やるときにはやるということだろう。
【米連邦公開市場委員会(FOMC)(3月15~16日)】
3月のFOMCでの利上げ決定は予想されていない。イエレンFRB議長やFRBの高官たちは米国経済の鈍化懸念や市場の混乱などを背景に、3月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ見送りを示唆している。
しかしながら、先週金曜日の米2月雇用統計発表後、6月14〜15日開催のFOMCでの利上げ織り込み度は、1か月前の26%からに40%へ跳ね上がった。(参照:「
Barrons」)3月のFOMCでの利上げが見送られたとしても、6月以降の利上げが無くなったわけではない。