先述のように、民主党は共和党と違い、各州の得票数に比例して各候補に代議員が振り分けられる。とすると、全米規模の世論調査で支持率拮抗が伝えられるサンダース候補にも勝ち目はあるように見える。それぞれの州で勝ったり負けたりはあろうが、全米規模で支持率が拮抗しているのなら、最終的には代議員数も伯仲する計算になるからだ。しかし、ここからが民主党の選挙の複雑なところだ。
民主党の候補者選びには、各州の選挙で選ばれる代議員の他に、大統領経験者や現職州知事などによって構成される「
スーパー代議員」と呼ばれる人々がいる 。通常の代議員は自分の州の選挙結果に従う。代議員個人の意思は関係なく、約束通りの投票を行うのが彼らの義務だ。しかし、この「スーパー代議員」は選挙結果や情勢調査に関係なく、完全に自由意思で投票できる権利を持っているのだ。
このスーパー代議員は、2016年大統領予備選の場合、717名いる。4000名を超える一般の代議員の総数に比べて極めて少数だ。が、この717名のスーパー代議員のうち、「バーニーサンダースに投票する」と言明しているのは、わずか22名に過ぎない。「ヒラリークリントンに投票する」と言明しているスーパー代議員の数は455名にのぼる。スーパー代議員獲得数ではヒラリークリントンの圧勝といっていいだろう。(※各候補が獲得した代議員数は
こちらを参照)
つまり、全米規模での支持率が示すように、サンダース候補とクリントン候補の支持率が伯仲し、それに比例して獲得代議員数が拮抗したとしても、スーパー代議員の獲得で圧勝しているヒラリークリントンが最終的に勝つ公算が高いのだ。
これがアメリカの各メデイアが総論として「クリントンの優勢は変わらない」という論調で足並みを揃えている理由だ。
サンダース候補は長年、無所属として活動してきた。
民主党入りしたのは大統領選挙直前に過ぎない。一方でクリントン候補は、長年、党に貢献のあった人物。大統領経験者や党の重鎮などで構成される「スーパー代議員」たちが、サンダースではなく、クリントンを支持するのも無理からぬこと。だからこそ、サンダース候補は「ワシントンのエスタブリッシュメント政治に終止符を!」というスローガンを叫ばざるをえなかった側面もある。
そして、今ままさに、その「ワシントンのエスタブリッシュメント」が、サンダース候補の前に立ち塞がりつつある。ラディカルな政策で人気を獲得してきたサンダース候補だが、今後の雲行きは、極めて厳しいと言わざるをえないだろう。
<取材・文/菅野完(Twitter ID:
@noiehoie) photo by
Christopher Skor(CC0 PublicDomain)>