民主党サイドの話題は、もっぱらバーニー・サンダース候補がどこまで善戦できるかに集中している。
しかし全般的にはクリントン候補が総合的な勝利を収めるだろうという趨勢はほぼ動かない。
サンダース候補の支持率は全米規模の世論調査でクリントン候補の支持率に肉薄するまでに迫っているし、クリントン陣営にマイノリティ団体の支援表明や推薦が次々と寄せられつつあるものの、それでもバーニー・サンダース陣営を突き放すに至っていない。あくまでも全米規模ではあるものの、サンダース陣営は未だに堅調なのだ。
にもかかわらず、どのメディアも「予備選全体の趨勢として、クリントン陣営の優勢は揺るがない」という論調で一致している。
全米規模の世論調査の結果や、各州での選挙結果だけが伝えられる日本では、クリントン優勢のみを伝えるアメリカのメディア各社の姿勢が奇異に映るかもしれない。しかしこれにはアメリカ大統領選挙予備選の複雑なシステムが関係している。
民主・共和両党とも、予備選では、それぞれの州における大統領候補選出人を獲得することが目標となる。
有権者(この場合は党員)は支持する候補の名前を投票用紙に書くものの、厳密にいえば、予備選で選ばれているのは「代議員」と呼ばれる大統領候補選出人だ。代議員は、選挙結果に従い、どの候補者に投票するかを決める。この代議員の数は、州の人口などによって各州の定員が決まっている。
しかし、地方自治と言うよりも地方独立と言ってもいいアメリカでは、それぞれの州で、予備選の行われ方が違う。
民主党ではすべての州で得票数に比例して各候補の代議員獲得数が決定するが、共和党は複雑だ。民主党のように得票数に比例して代議員を獲得できる州もあれば、The Winner gets all方式—つまり得票数一位の候補がその州の代議員を総取りする州もある。
この辺りの共和党の複雑さが「トランプ一強」のように見える共和党候補者レースから支持率の低い候補者たちがなかなか離脱しない理由でもある。考えようによっては、世論調査の結果にかかわらず、彼らにも勝ち目は存在するのだ。