「銀座をダメにした」のは誰なのか?

photo by David Spencer on flickr(CC BY-ND 2.0)

 差別というのは「癖」なのかもしれない。そう思わせる論説が、BLOGOSなるメディアに掲載された。 「外国人観光客は目障りだ」という記事だ。  なんと「特に中国人は目障りだ」の一文で締める念の入れようだ。  こうした「サヨクメディアがあえて言わないけどみんなが言いたい事、書いてやったぜ」「どーせ差別だって騒ぐんだろ?それ見越してやってんだぜ」という古臭い芸風は、80年代前半に渡部昇一が開発したものだ。  演芸史になぞらえば「ワイルドだろ?」のスギちゃんより古い。80年代前半なのだから、ダウンタウン世代もたけしもさんまも通り越して、やすしきよしの芸風を、何の工夫もなしにいまだにやろうとしているのと同じだ。  こうした古い芸風をいまだに続ける芸人もいれば、その芸人を使い続けるメディアもあるわけで、もはやこうした差別芸は、「癖」「嗜癖」としか言いようがない。 「癖」の類だから、批判されてもなぜ批判されているのか理解できない。また、「癖」の類だから、批判されると自分の尊厳が傷つけられたと感じる。この辺りが、差別するものが「差別するなというお前たちの方が差別している」というあのお定まりの使い古された言葉を反論にもなっていないのに反論だと思い込んで吐いてしまう所以だ。 「癖」の類だから、自分たちにはバイアスがかかっていないと思い込んでいる。 「癖」の類だから、自分たちが濁りきった目で風景を見ているのに、自分の目は澄み切っており、現実を直視していると思い込んでいる。この辺りが、差別するものが「俺はリアリストだ」と判を押したような愚にもつかない同じ回答を繰り返してしまう所以だ。  こうした「差別する者は、『リアリティに立脚し事実を直言する』と嘯くが、その『リアリティ』とやらは現実でもなんでもなく、濁った目をとおしてみた幻想にすぎない」というよくあるパターンの格好の事例と言える。
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果たして、銀座は「中国人観光客」ばかりなのか?
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