被災地の自治体で進む「エネルギー自給」の現状

東日本大震災から3年、マスコミ報道もかなり少なくなってきているが、状況はそれほど変わっていないという。震災復興は今どうなっているのか? 防潮堤は本当に必要なのか? 現地の声に耳を傾けてみた。

震災をきっかけにエネルギー自給が進む

エネルギー自給

奥松島「絆」ソーラーパーク。被災跡地利用でのメガソーラー建設は、被災3県で初の事業として注目されている

 宮城県東松島市は震災で市街地の65%が浸水、甚大な被害を受けた。特に津波で徹底的に破壊された地域の跡地利用をどうするかが課題となっている。  そこで、地域活性化とエネルギー自給率を高めることを同時に行う「ネット・ゼロ・エネルギー・シティ」を復興策の目玉として策定。 ’22年までに一般家庭の使用電力を100%自給することを目標にしている。  その象徴的な事業が、’13年8月に稼働し始めた「奥松島『絆』ソーラーパーク」だ。東京ドーム約1個分の敷地に敷き詰められた太陽光発電パネルは、年間210万kW時、約600世帯分の発電能力がある。また、東松島「絆」カーポートソーラーもつくられた。津波の影響のない市内避難所の3つの駐車場に計270kWの太陽光パネルを設置。災害時には非常用電源として市が優先的に使える。「これらの施設の建設や維持管理は、地元企業に担ってもらっている」(東松島市復興政策課)など地域への利益還元も配慮されている。  宮城県北部の登米市でも、地元住民が出資する太陽光発電事業が進行中だ。兵庫県神戸市に拠点を置く市民団体の仲介で、ガイアシステムほか県外3社の企業が登米市での太陽光発電事業を開始、「合同会社とめ自然エネルギー」を設立した。1つあたり50kWの太陽光発電所を登米市内に50か所設置、それぞれの発電所のオーナーを登米市民限定で募集した。通常、50kW規模の太陽光発電所の建設コストは約2000万円、市民オーナーの負担は300万円。残りの資金は合同会社「とめ自然エネルギー」が担う。固定価格買取制度により、市民オーナーは20年間安定して売電収入を得られ、災害時には非常用電源となる。 「おかげで市民オーナー応募が定員となり、今年中には50か所すべての発電所が建設される見込みです。この事業をモデルにほかの被災自治体でも同様のプロジェクトを進めていければと考えています」(ガイアシステム広報)。  震災をきっかけに高まったエネルギー自給への関心。こうした自治体独自の取り組みのほうが、国の事業より復興に役立っているのかもしれない。 取材・文・撮影/志葉 玲 横田 一
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会