被災地の自治体で進む「エネルギー自給」の現状
2014.07.18
東日本大震災から3年、マスコミ報道もかなり少なくなってきているが、状況はそれほど変わっていないという。震災復興は今どうなっているのか? 防潮堤は本当に必要なのか? 現地の声に耳を傾けてみた。
宮城県東松島市は震災で市街地の65%が浸水、甚大な被害を受けた。特に津波で徹底的に破壊された地域の跡地利用をどうするかが課題となっている。
そこで、地域活性化とエネルギー自給率を高めることを同時に行う「ネット・ゼロ・エネルギー・シティ」を復興策の目玉として策定。 ’22年までに一般家庭の使用電力を100%自給することを目標にしている。
その象徴的な事業が、’13年8月に稼働し始めた「奥松島『絆』ソーラーパーク」だ。東京ドーム約1個分の敷地に敷き詰められた太陽光発電パネルは、年間210万kW時、約600世帯分の発電能力がある。また、東松島「絆」カーポートソーラーもつくられた。津波の影響のない市内避難所の3つの駐車場に計270kWの太陽光パネルを設置。災害時には非常用電源として市が優先的に使える。「これらの施設の建設や維持管理は、地元企業に担ってもらっている」(東松島市復興政策課)など地域への利益還元も配慮されている。
宮城県北部の登米市でも、地元住民が出資する太陽光発電事業が進行中だ。兵庫県神戸市に拠点を置く市民団体の仲介で、ガイアシステムほか県外3社の企業が登米市での太陽光発電事業を開始、「合同会社とめ自然エネルギー」を設立した。1つあたり50kWの太陽光発電所を登米市内に50か所設置、それぞれの発電所のオーナーを登米市民限定で募集した。通常、50kW規模の太陽光発電所の建設コストは約2000万円、市民オーナーの負担は300万円。残りの資金は合同会社「とめ自然エネルギー」が担う。固定価格買取制度により、市民オーナーは20年間安定して売電収入を得られ、災害時には非常用電源となる。
「おかげで市民オーナー応募が定員となり、今年中には50か所すべての発電所が建設される見込みです。この事業をモデルにほかの被災自治体でも同様のプロジェクトを進めていければと考えています」(ガイアシステム広報)。
震災をきっかけに高まったエネルギー自給への関心。こうした自治体独自の取り組みのほうが、国の事業より復興に役立っているのかもしれない。
取材・文・撮影/志葉 玲 横田 一
震災をきっかけにエネルギー自給が進む
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