この“時間短縮”という問題に目を向けると、長崎ルートの必要性そのものも疑わしく思えてくる。現在博多~長崎間を結ぶ特急「かもめ」の所要時間は約2時間8分ほど。それに対して、新幹線では約90分と見込まれているのだ。つまり、短縮される時間はわずか30分程度に過ぎない。これだけの時間短縮のために、フル規格での軌道建設どころかフリーゲージトレインという新たな技術開発を行うメリットは果たしてあるのだろうか。
「フリーゲージトレインは、国交省と鉄道・運輸機構が出した整備新幹線計画をすすめるための切り札だったんです。北陸新幹線敦賀以南の延伸計画でも、湖西線にフリーゲージトレインで乗り入れるという案が出されています。新たに長大なフル規格新幹線を建設することは現状難しいですが、フリーゲージトレインと組み合わせる形なら国民世論の理解も得やすいし財源も確保しやすいということです。特に鉄道・運輸機構は新幹線整備という業務がなくなると存在意義が危うくなりますから……」(前出の記者)
来年度予算の概算要求では、国交省は約27億円のフリーゲージトレイン開発費を計上している。そもそも必要性が疑わしい新幹線建設ために、実現性も定かではない開発費が大量に投じられている。新幹線開業となれば、大いに注目を集めて華やかに報じられるが、その一方でこうした負の問題を抱えていることも忘れてはならない。
<取材・文/境正雄>