JR九州に納入されたフリーゲージトレイン3代目試験車両(写真/川崎重工プレスリリース)
それを回避する方法は2つ。ひとつはなんとしてもフリーゲージトレイン開発を成功させること。そしてもうひとつは在来線を利用するとされている新鳥栖~武雄温泉間もフル規格化することだ。しかし、後者の方法には問題も少なくない。
「最大の問題は建設費。佐賀県内をフル規格化するとすれば、佐賀県の建設費負担が800億円にのぼるという話が出ています。ただ、佐賀県は長崎ルートの建設にそれほど積極的ではないんです」
その背景には、九州の中心都市である福岡と佐賀との距離の近さにある。有明湾沿いに暮らす佐賀県民の男性は言う。
「今でも佐賀から博多まで、在来線特急で1時間かかりませんからね……。それが20分程度早くなるだけで新幹線料金として値上げされたらたまりませんよ。佐賀には新幹線のメリットはなんにもない。それなのに800億円とは……。本当に出すのだとすれば、開いた口がふさがりませんよ」
実際にこうした意向は佐賀県をはじめ地元の市町村にも広がっている。つまり、フル規格化も現実的とはいえないのだ。その一方で、問題を解決するはずのフリーゲージトレインもめどはたたない。前出の記者は、武雄温泉~長崎間だけフル規格で走らせるのが現在もっとも現実的な手段だと語る。
「ただし、それではあまりに利便性が悪い。鹿児島ルート開業時も、最初は新八代~鹿児島中央間が先行開業。このときは新八代駅で特急『リレーつばめ』と新幹線が同一ホーム乗り換え可能な構造にして利便性を維持しました。もちろん長崎ルートの武雄温泉駅でもそれは可能なのですが、問題はやはり距離。JR九州は長崎ルート開業後も並行在来線の長崎本線は経営分離しない方針です。さらに在来線特急も一定数運行するという話すらある。となれば、新鳥栖・武雄温泉で2度乗り換えが強いられる新幹線をわざわざ使う人がいるでしょうか……」