事業者だけでなく利用者も過信する鉄道の「安全神話」
⇒【前編】「世界一安全な日本の鉄道になぜ最近事故が多いのか?」https://hbol.jp/37865
⇒【中編】「公共性を無視した批判は鉄道インフラを危うくする」https://hbol.jp/37871
そう考えると、JR北海道が事故や不祥事を続発させたのも、こうした厳しい経営環境を踏まえれば同情の余地がないわけではない。ただ、もちろんいくら経営が厳しくても安全性を軽視することは公共交通を担う事業者として絶対に許されることではないのも事実だ。
利用者は『もっと速くしろ』『本数を増やせ』『事故時の運転再開を早くしろ』などと事業者側に要望する。それも理解できるが、何より安全を確保することが大前提。福知山線脱線事故も、こうした利用者の要望に応え続けた結果ムリのある運行ダイヤとなったことが引き金とする見方も根強い。
「ただ、それでも山手線支柱倒壊事故に対するJR東日本の対応は非常に問題。現場が“安全神話”を盲信して油断があったことは間違いない。それでいて新幹線の架線切断による運休では乗客を長時間停電した電車の中から出さなかった。『安全確保が』と言い訳するのでしょうが、それは間違い。全列車が停車していて架線への送電もされていないなら、安全は乗客を従わせるための大義名分ではなく、事業者側が最善を尽くして守らなければならないものです。そして、その努力をきちんと利用者に説明したうえで、理解と協力を求めていく。JR東日本の対応はそうした順序がわかっているとは思えません」(前出のコンサルタント)
実際、山手線の事故に関してJR東日本は当日にHPでお詫びをしただけで、その後はHPでは一切触れていない。運輸安全委員会の調査が行われている最中とは言え、決して誠実な対応とは言えないだろう。事業者はしっかりと安全に取り組むとともにそれを乗客に伝える。そして乗客も安全がタダではないことを理解し、過剰サービスを求めず協力すべきところは協力する。こうして初めて鉄道の安全が守られることを、忘れてはならないだろう。
<取材・文/境正雄>
鉄道の安全性は事業者の誠実さ、利用客の理解によって成立する
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