12歳の少女に2458人の男が群がる映画『SNS-少女たちの10日間-』。突きつけられるおぞましい現実

同日上映の『スプリー』も要チェック

 奇しくもと言うべきか、この『SNS-少女たちの10日間-』の公開日と同日の4月23日より、同じくSNSの危険性を(全く別の角度から)示した映画『スプリー』が公開されている。  そのあらすじは、10年をかけても全くSNSでバズった経験のないライドシェアドライバーが、乗客を殺害する生配信を始めるという過激なもの。主人公を演じるのはNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で知られるジョー・キーリーで、現実の彼はインスタグラムで675万人を超えるフォロワーを抱える人気者だが、劇中では心底つまらないクズ配信者にしか見えないのが面白い(つまりは演技が上手い)。ライブ配信映像を交えた映像にはリアリティがあり、あれよあれよと悪い方向に転がっていく様はほぼブラックコメディだった。  悪趣味な内容に思えるところだが、実は存外タメになる教訓もある。主人公は「あのインフルエンサー調子に乗りやがって!絶対に俺のほうが面白いのに!」という理由で殺人を正当化するため、彼を反面教師にして「人気者に嫉妬する(その挙句に犯罪行為をする)のってみっともないな」「バズることそのものを目的化するのって本当につまんないな」と思うことができる。終盤の女性コメディアンの主張も、SNS時代に生きる人にとっての重要な価値観だろう。  『SNS-少女たちの10日間-』も『スプリー』も、もちろんSNS自体が悪いと訴えられているわけではない。包丁が使い方次第で、料理の道具にも、人を傷つけ殺す手段にもなるように、「使う人自身」の問題を先に考えるべきだ。ぜひ、全く別の角度からSNSの使い方を見直せるこの2作を、合わせて観ていただきたい。 <文/ヒナタカ>
雑食系映画ライター。「ねとらぼ」や「cinemas PLUS」などで執筆中。「天気の子」や「ビッグ・フィッシュ」で検索すると1ページ目に出てくる記事がおすすめ。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」 Twitter:@HinatakaJeF
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会