12歳の少女に2458人の男が群がる映画『SNS-少女たちの10日間-』。突きつけられるおぞましい現実

裸の写真を送る理由

 本作の撮影において、3名の女性には以下のルールが適用されていた。 (1)自分からは連絡しない (2)12歳であることをはっきり告げる (3)誘惑や挑発はしない (4)露骨な性的指示は断る (5)何度も頼まれた時のみ裸の写真を送る (6)こちらから会う約束を持ちかけない (7)撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する  おおむね検証の正確さと安全性のバランスを考えたルールに見えるが、(5)の何度も頼まれた時のみ裸の写真を送る、にはギョッとしてしまう方が多いだろう。しかし、実際に送るのは本物ではない、合成されたニセの写真だった。それでも安全性の面からはやや逸脱した行為にも思えるが、これにより、観客はさらなるおぞましい現実を目の当たりにすることになる。
©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

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 何しろ、その裸の写真を送った男性は「君の写真をネットに公開する」と脅してくる上に、実際に公開した挙句「行動を改める気になったか?」「君が僕を苦しめるから悪いんだ」と相手に責任を転嫁し、「逆らうと状況が悪化するぞ。家族がどう思うかな?」とさらに脅迫してくる。性的虐待はもちろん、強迫行為も厭わず、さらに少女を精神的に追い詰めようとする、その性的搾取の行為の下劣さは、筆舌に尽くし難い。そのことを顕在化させるために、ニセの裸の写真を送る必要があったのだ。

「子どもの精神的な弱さ」を利用する男たち

 これらのおぞましい行為をするのはロリコンの変態だけだろうと思われるかもしれないが、劇中では決してそうではないことも告げられる。「彼らは決して小児性愛者(ペドフィリア)ではなく、子どもの世界に入り込んで、子どもと交流することに魅力を感じている」「実際にネット上で子どもを狙う小児性愛者のパーセンテージは3~5%にすぎない」と語られているのだ。  確かに、劇中の男たちを追っていると、少女が性愛の対象というよりも、子どもへの性的搾取そのものが目的化し、そこに悦楽を見出している者ばかりであることもわかっていく。前述した裸の写真で脅してくる者はもちろん、「君のせいで精液が出せなくてひどい痛みで苦しんでいる」などと性的な話題をもって脅迫してくる者もいる。はっきり、彼らは「子どもだからこその精神的な弱さ」を性的虐待・搾取に利用しているのだ。
©2020 Hypermarket Film, Czech Television, Peter Kerekes, Radio and Television of Slovakia, Helium Film All Rights Reserved.

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 言うまでもなく、子どもに性的な魅力を感じる者が、必ずしも劇中のような犯罪行為に及ぶわけではないだろう。ロリコンかそうでないかに関わらず、平然と子どもを性的虐待・搾取するような男がネット上には蔓延っているということを、この映画ははっきりと認識させてくれる。  また、そうして子どもへ性的虐待をする男たちが「相手が(性的行為を)望んでいた」と勘違いするケースも多いのそうだ。劇中ではこのことについて「体が大きくて年上の人に従順に振る舞ってしまうのはとても自然なこと」「同意があると感じるのは彼らの幻想だ」と一刀両断に切り捨てられる。彼らが、そのような当たり前のことに気づかず、自らを正当化してしまえるということも恐ろしい。それは同時に滑稽でもあり、その滑稽さにも、彼らは気づいてはいない。
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