なぜEek変異株は見過ごされたのか? そして統計からわかる日本の第4波傾向が示すリスク

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photo/shutterstock

見過ごされたE484K変異株

 筆者はこれまでにあくまで統計をもとに世界と本邦のCOVID-19パンデミックの状況について論じてきました。筆者が本連載で第四波エピデミックに言及したのは、2021/02/01公開記事となりますが、残念ながら3月末までに英国株(B.1.1.7)などの変異株がドミナント(支配的地位)となり、第四波エピデミックとなる予測は的中してしまいました。  現在本邦では、西日本、北海道、新潟県ではB.1.1.7がドミナントであると考えられますが、東日本では変異株があまり見つかっていません。これは国立感染症研究所(感染研)指定による都道府県など自治体での変異株スクリーニングがN501Y変異のみを対象としており、他の変異は見落とされる体制となっているためです。そのため、SNSなどで鍵アカウントを利用しコッソリ実情をつぶやいている担当者による、「◎◎県では、日本一の体制で調査しているが変異株は個発持ち込みの一例だけ、変異株は居ない」という発言などが流れていましたが、これはN501Y変異だけに絞ってしまうと言う極めて非科学的な厚生労働省(厚労省)、感染研(厚労省傘下)の指示によるためで、完全に誤りです*。結果としてこの県では東北最悪の状況を引き起こしているであろうウィルスが、E484Kをもつ変異株であることを発見する事が大きく遅れたことになります**。 〈*この人物は、今週に入りE484K変異が蔓延しているとSNSで発信し始めているが、結局1カ月程度発見が遅れたこととなった。厚労省の指示に盲従した結果、時間を無駄にしたことになる。最近まで医局勤めでこの体たらくであるが、本邦医学界の宿痾であり風土病と考えられる。但し測定者としては測定事実をねじ曲げておらずその点は信頼できる〉 〈**変異ウイルス「E484K」 仙台で167件確認 2021/04/06 河北新報〉  実際には、本連載2021/03/17公開記事で速報したようにE484K変異を持つ合衆国由来の可能性がある変異株が関東・東日本ではドミナントを占めている可能性が高い状況です*。これは厚労省・感染研指定の変異株スクリーニングでは発見できません。スクリーニングにかかれば、感染研で必ず本格的に解析しますので詳細が分かりますが、なぜかスクリーニングが変異株を見つけないように指定されているのです**。 〈*国立遺伝研 川上浩一博士によるTweet〉 〈**感染研へは陽性者検体の無作為抽出で一部送られているという話もあるが、未確認である。実はこういう重要なことですら研究者の間には情報が共有されていない。厚労省と感染研が関わる情報は透明性が極めて低い〉  厚労省・感染研による相変わらずの非科学的で非論理的なPCRスクリーニングへの指示は、B.1.1.7(英国株)、B.1.351(南ア株)、P.1(ブラジル株)といった現在問題となっている変異株に共通するN501Y変異だけを見つければ良いという「効率化」の考えに依りますが、これが過去15ヶ月間で本邦をジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーによって東部アジア・大洋州ワースト4にしてしまった元凶であるPCR検査抑制論の一貫と言えます。厚労省による小手先芸の根本的に誤った効率化方針は、事態を極度に悪化させています。  実際に、東日本でE484K変異を持つ何らかの株がドミナントになっている可能性があり、感染研・厚労省は、それを見逃してしまったことになります。E484K変異を持つ変異株には、免疫・抗体回避特性があり、ワクチンと抗体薬の効果が下がることが知られています*。一方でE484K変異単独では、優先的に感染力が強化されるか否かは不明で感染力が普通ならばその点では脅威度はやや下がります。ウィルスの変異は常に起こりますし、E484Kと他の変異が組み合わさることでどのような脅威になるか否かは、その組み合わせが多いために現時点では既知の一部を除きわかっていません。 〈*例えば、B.1.351(南ア株)に対してアストラゼネカ製ワクチンは、事実上無効であることが報告されている。他のワクチンも有効性が下がり、三回接種化などの有効性維持のための対策が考えられている。Efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 Covid-19 Vaccine against the B.1.351 Variant 2021/03/16 NEJM〉  従って、厚労省・感染研は、またしてもジャパンオリジナル検査資源抑制論に基づき、根拠のない希望的観測による変異株スクリーニング検査限定をおこなった結果、東日本を海外から侵入した変異株のオリンピック会場としつつあると言えます。厚労省と感染研のおかげで変異株ウィルスご一行は、大盛況です。厚労省と感染研は、アスリートや市民よりも新型コロナウィルスの方が大切なのでしょう。どんどん新手が繁殖して行きます。

日本を追い詰める「ジャパン・オリジナル検査資源抑制論」

 現時点で、厚労省発表の変異株に関する情報を見る限り、西日本、新潟、北海道ではB.1.1.7(英国変異株)が、関東・東北を中心とする東日本とおそらく沖縄県では、E484K変異を持つ日本特有の変異株が蔓延しています。そして、関東では、関西や宮城県に対して約二週間感染拡大が遅れています。関東一円でのエピデミックの遅延は、単純に緊急事態宣言解除が遅かっただけという理由と考えられます。  このように、B.1.1.7, B.1.351, P.1などN501Y変異を持つ特定の変異株以外を検知できないという効率重視を騙るジャパンオリジナル・検査抑制がここに来ても最悪の結果となっています。既に国外ではNHK報道*のロイター配信を元に「日本におけるE484K変異株(Eek:イーク)」として広く報じられています**。これは、場合によっては”Japan Travel BAN”(対日人的交流封鎖)***という最悪の事態にもつながりかねないことです。 〈*異なるタイプの変異ウイルス 東京の病院で3分の1から検出 2021/04/02 NHK〉 〈**Troubling “Eek” variant found in most Tokyo hospital COVID cases – NHK 2021/04/04 Reuters〉 〈***昨年12月から英国がTravel BANとなった。参照:HBOL〉  現在本邦では、西日本と東日本で異なる変異株をドミナントとした非季節性第四波エピデミックSurgeが立ち上がっており、たいへんに厳しい状況にあります。筆者は、統計を観察してきましたが、西日本の第四波エピデミックSurgeに対し、東日本の第四波エピデミックSurgeは、特に関東において関西に対して二週間遅れています。このため関東では、緊急事態宣言の解除、年度初め、学校などの始業が、エピデミックSurgeを加速するという最悪の時期となっており、四月中旬のエピデミックの状態が懸念されます。  本邦は、第三波エピデミックSurgeへの対応の大失敗が災いし、謎々効果*影響国である東部アジア・大洋州諸国で事実上のワースト4**となっています。そのうえで更に変異株スクリーニングへのジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーに基づく「効率的な」「抑制」によって取り返しの付かないことになっています。 〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる百万人あたりの日毎新規感染者数が米欧と南米に比して1/10〜1/1000である。またアフガニスタン以東でも百万人あたりの日毎新規感染者数が米欧と南米に比して1/10程度である。 筆者は、2020/03以降この事実を「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ現象を後に”Factor X”と呼称している人たちもいる。致命率(CFR)は、謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。モンゴルは、昨年11月以降の状態がたいへんに悪く、このままでは謎々効果が消滅する可能性がある。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉 〈**統計上はシンガポールをワースト2とするワースト5だが、シンガポールは、昨年9月には収束国となっているため除外している。なお本邦には、ワースト5のモンゴルが肉薄している〉
東部アジア・大洋州諸国での百万人あたりの累計感染者数の推移 (ppm線形) 2020/01/22〜2021/04/06

東部アジア・大洋州諸国での百万人あたりの累計感染者数の推移 (ppm線形) 2020/01/22〜2021/04/06/OWID

 また、謎々効果影響国であるモンゴルで、初の謎々効果崩壊の可能性があり、筆者は注視しています。現在情報が殆ど無いのですが、モンゴル共和国は、建国来、旧ソ連邦、ロシア共和国との関係が深く、現在エピデミックの状態が悪くしかも情報の透明性が極めて低いロシアから感染力が強力な変異株などが侵入したのではないかと筆者は疑っています。
モンゴルにおける百万人当たり日毎新規感染者数の推移(ppm Raw DATA線形)

モンゴルにおける百万人当たり日毎新規感染者数の推移(ppm Raw DATA線形)/OWID

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日本・韓国・台湾の定点観測2021/04/06
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