しっかり検査で第4波を制する台湾と検査抑制論という愚論が罷り通った日本の惨敗ぶり、統計で明らかに

定点観測2021/03/21台湾

 まず日本、韓国、台湾の2021/03/11現在の統計を比較して行きましょう。
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm, 線形, 7日移動平均)2020/09/01-2021/03/21

日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm, 線形, 7日移動平均)2020/09/01-2021/03/21/日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/21 日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/21/台湾における日毎新規感染者数の推移(人, 線形, 7日移動平均)2020/01/28-2021/03/21 台湾における日毎新規感染者数の推移(人, 線形, 7日移動平均)2020/01/28-2021/03/21/昨年5月以降の新規感染者は、殆どが空港検疫などの水際で発見された持ち込みである/OWID

 台湾は、世界で最もCOVID-19対策に成功している国の一つです。昨年3/20に27人(人口比換算で本邦の153人相当)の新規感染者を記録した第一波エピデミックの収束以降、明確なエピデミックを生じていません。このため日韓と同時にグラフ化するとX軸に張り付いてしまい殆ど何も分かりません。  しかし台湾のみでグラフ化すると3月の第一波の後、たいへんに小規模ですが7,8月の第二波、9月から2月の第三波(秋の波)、この3月の第四波エピデミックが発生していることが分かります。  但しこれらは殆どが空港検疫など域外から持ち込まれたウィルスが水際で発見されているのであって、国内発生はたいへんに希です。従って台湾は、交流のある東アジア、大洋州、米州でのエピデミックの指標となります。  現状では、台湾において検疫の国内側ではエピデミックの発生は確認されていません。 〈この日、空港などの検疫を含み新規感染者が発見されなかったことを喜ぶゾンチャイ(総柴)。中華民国衛生福利部(台湾厚生省)  台湾においても空港検疫を大部分として2/18以降、新規感染者の発見は増加しており、主として東部アジア、大洋州、米州におけるエピデミックの発生を示唆しています。  韓国と本邦においても第四波エピデミックが始まっていますが韓国は、K防疫によって感染拡大をなんとか押さえ込んでいることが分かります。  一方で本邦は、7日移動平均で新規感染者数増が始まった3月中で3/21迄に30%の新規感染者数の増加となっています。本邦では、明確に非季節性第四波エピデミックSurgeを生じており、昨年10月における第三波エピデミックSurgeと酷似した推移となっています。  アジアでは、2/15頃からエピデミックが発生しており3/21現在で日毎新規感染者数が2/15起点で2.3倍まで増加しており、既に指数関数的増加を見せつつあります。

PCR検査拡充で日本と正反対に制圧に成功した台湾

 それでは日毎新規感染者数の二週間変化率を見ましょう。
日本、韓国における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/021

日本、韓国における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/021/+で増加、O%で変化無し、―で減少/台湾における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/021 台湾における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/021/+で増加、O%で変化無し、―で減少/OWID

 台湾では、2/23に半減日数9日という優秀な値を出しましたが。その後一貫して二週間変化率は増加し続け、3/5以降は、増加を示す正の値となっています。  実際には、3月に入り、2021/03/22時点で筆者が調べた限りでは、台湾の本土個案(検疫より内側の台湾市中)ゼロが続いています。第四波エピデミックの前にPCR検査を増やし、市中感染者を徹底的に発見したが故で、本邦と正反対となっています。。 〈2021/03/18の台湾における防疫情報中華民国衛生福利部(台湾厚生省)  韓国では、1月末のSpike以降、ウィルスとK防疫の鍔迫り合いの状態が続いており、一進一退で拮抗していると言えます。K防疫体制は、昨年11月下旬の水準となっており、妥当と言えますが、韓国ではB.1.1.7特有の強い感染力が現れた場合に備えています。  本邦は、2月中旬には半減日数(半減期)*が12日程度とたいへんに素晴らしい状態を記録しました。その後も2/24までは、半減日数14日を維持し、その状態が続けば4月初旬には収束していましたが、2/25頃以降、一貫して二週間変化率は増加し続け3/22現在で倍加時間60日程度となっています。既に本邦は、感染拡大が明らかに始まっていると言えます。 〈*感染者数が半減するまでに要する日数(時間)なお、前回までの筆者による試算は、半減期を過大評価していた。実際には前回まで試算した半減期は試算値の半分とすれば概ね正しい〉  菅内閣による緊急事態宣言(菅緊急事態宣言)の緩和が2/8からですので、二週間変化率からも菅緊急事態宣言は1月中にはたいへんに効果があったもの一部解除によってエピデミックの収束を逃したと言えます。しかも折悪しくB.1.1.7が在来株に打ち勝ち、ドミナント(支配株)になることを促進してしまった結果になりました。惜しいことをしたものです。世界で本邦のみのジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーに基づく検査抑制ドグマにより、索敵=ウィルスの実態把握をしなかったが故の痛恨事となりました。
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検査数統計からも明白な台湾成功と日本の惨敗
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『日本を壊した安倍政権』

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