宗教だけじゃない、大学生を狙う「怪しい勧誘」。大学・高校でカルト勧誘を断る方法

勧誘イメージ

cba / PIXTA(ピクスタ)

 前回、主にカルト宗教の勧誘を中心に、その手口と対策法について書いた。しかし、特に大学生に関しては、宗教以外にもマルチ商法や情報商材ビジネスその他の投資や企業を謳う悪徳商法の勧誘もあれば、政治セクトの勧誘もある。前回より少し幅を広げて解説する。

「心が弱い人がハマる」は誤解

 宗教に関しては、「悩みがある人がハマる」「心が弱い人がハマる」という物言いをする人がいる。これは大きな誤解だ。  カルト勧誘は確かに、学食で1人で食事をしている時や街を1人出歩いている時など(いかにも孤独そう見える場面)に声をかけられたというケースをよく聞く。しかしもともとカルトは、相手との会話を優位に進めるために1対1、または勧誘対象1人に対して2人がかりで勧誘する。悩みがある人や孤独な人ばかりを狙っているわけではない。  悩みがなくても孤独でなくても、学内や街中で1人で行動することが全くない学生などいない。カルト勧誘に出くわす確率は、悩みがある人も強い人も弱い人も同等だ。  悩みの有無よりも、「優しくしてくれた相手の期待を裏切りたくない」とか、「当初は宗教勧誘じゃなかったはずだけど、話を聞いてみるといいことを言っている」という考え方をしがちな真面目さの方が、なり行きでカルトに入信させられてしまいやすい要因になることもある。また、悩みというより目的意識が高い人も、カルト勧誘にフィットしやすい。というより、カルトはそういう人にフィットする偽装勧誘もしっかり用意している。  たとえば前回登場した摂理は、就職活動のための勉強会、ボランティア、国際交流等々、意識高そうなサークルを装った勧誘も行う。浄土真宗親鸞会は、「生きる意味を考える」等と称して、「意識高い系」心をくすぐる。  真面目さや高い目的意識を持つこと自体は立派なことだ。しかしそういう人は、カルトから見ても、やはり有望な人材なのである。  多くのカルトは学生から多額のカネを取れるなどとは期待していない。教団の活動に奉仕したり新たな人を勧誘してくれたりする、労働力として期待されている。近年では、学業を捨ててまで教団活動に依存するより、勉強や就職活動もしっかりやって立派な社会人信者として後進を指導したり献金したりしてくれるようになることを期待しているフシもある。  決して、「自分は大して悩みとかないから大丈夫」「弱い人間ではないから大丈夫」などとは考えないでほしい。むしろそういう人たちには、「悩みを抱えている弱い人」とはまた違った「つけ入る隙」がある。

政治セクトにも要注意

 大学には宗教だけではなく政治セクトもいる。一般的には過激派をイメージする人が多いかもしれないが、左翼もいれば右翼もいれば過激派も穏健派もある。大雑把に「大学内で活動する政治集団(特に組織性が強いもの)」くらいに考えておけばいいのではないだろうか。  カルト宗教同様、政治セクトの中にも、団体の素性や目的を隠して勧誘する団体がある。  その1つが、日本共産党の青年組織「民主青年同盟」だ。「民青」とか「みんせい」といった名前で活動し、大学の中で勧誘活動も行う。民青は公式には日本共産党を「相談相手」と称して別団体を装っているが、元民青の活動家に聞くと、大学内で学生を勧誘するためのビラ撒きに共産党職員を動員するといったこともしており、実質的に共産党の下部組織だ。  統一教会が「原理研究会(CARP)」などの別組織を名乗って勧誘する手法とよく似ている。  共産党は、実は「カルト問題」に対して極めて良識的な問題意識も備えていたりする。統一教会に対しては昔から批判的だったし、機関誌である『しんぶん赤旗』には、一般紙が報じないような貴重なカルト問題の記事が載ることもある。大学におけるカルトの偽装勧誘を批判していたりもする。  ところが、たとえば東京大学では民青が、民青であることを隠した別団体を名乗って、統一教会や革マル派(共産党とは別の政治セクト)による偽装勧誘を批判し、学生に注意を呼びかける活動もしている。共産党は、偽装団体を作って他団体の偽装勧誘を批判するという、二枚舌を行っているのだ。  日本共産党自体やその政治思想が悪いものかと言えばそうとは限らない。共産党とわかった上で賛同して民青のメンバーになる分には、構わないだろう。統一教会と違って、霊感商法等で生活を困難にするほどの金銭を巻き上げられるわけでもないだろう。  あくまでも勧誘方法の問題だ。しかし組織の背景を誤魔化したり隠したりすることで勧誘する団体を信頼すべきかどうかは、よく考えたほうがいい。そういう不誠実な組織に関われば、当然、組織の不誠実さゆえのハラスメント等にあう可能性も高い。
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