KazuA / PIXTA(ピクスタ)
25年の長きにわたり、メンバーの一人も脱退することなく、不祥事も起こすことなく、幅広いファンの支持を集めてきたV6が解散することになった。ほかのアイドルグループをみても、これだけ長く継続したグループはない。これを企業の組織に照らしてみれば、人の入れ替わりもなく、組織の再編成もなく、持続的成長をはたすことはあり得ないだろう。V6の成功は稀有な例だと思えてならない。
私には、その理由は
V6のメンバーそれぞれが、異なる「
モチベーションファクター」を発揮していたことにあると思える。モチベーションファクターとは
意欲が高まる要素で、6つの要素で捉える。
チャレンジすることで意欲が高まる「
目標達成」、ほかの人とは異なる自分らしさを発揮することで意欲が高まる「
自律裁量」、責任をはたすことで意欲が高まる「
地位権限」、協力関係を築くことで意欲が高まる「
他者協調」、リスク回避の「
安定保障」、バランス重視の「
公私調和」だ。
V6のメンバーは、事務所退社や復帰というチャレンジをしてきた目標達成の
坂本昌行さん、野菜ソムリエなど自分らしさを発揮してきた
長野博さん、俳優としても地位を築いた
岡田准一さん、MCとして出演者の協力関係を図る他者協調の
井ノ原快彦さん、手話をマスターした安定保障の
三宅健さん、そして公私調和を図る現在の
森田剛さんというように、
6つのモチベーションファクターに6人がきれいに分散しているのだ。
20年来、筆者が企業や団体の能力開発をサポートする演習プログラムを実施するなかで、
日本人のモチベーションファクターはこれら6つにほぼ均等に分散することがわかっている。
つまりV6は、ファンそれぞれが持っている
6つのすべてのモチベーションファクターを持ち合わせているということだ。それこそが、
幅広い層のファンの支持を獲得してきた大きな要因だ。
しかし、グループ内のメンバーのモチベーションファクターが分散しているということは、一般にはグループ内の
チームワークの難易度が上がるということでもある。
たとえば、
目標達成の持ち主だけでメンバーを構成したら、「
○○にチャレンジしよう」と誰かが言えば、ほかのメンバーもチャレンジしたいので、そうだそうだと、一を言えば十を知るという状況で話が早い。
ところが、
目標達成の人と
安定保障の人とでグループを構成したら、いっぽうは「
リスクを度外視してチャレンジしよう」と言い、他方は「
慎重に取り組むべきだ」と反論し、なかなか話がまとまらないことがよくある。
「
価値観が異なる」「
相性が合わない」ということを突き詰めていけば、
モチベーションファクターの差異に行き着くのだ。
だとすれば、
同じモチベーションファクターの人だけでグループをつくればよいという考え方もあるが、日本人は6つのモチベーションファクターにわかれているので、それでは
多様なファンを巻き込めない。
私たちはチームのメンバーを選ぶときに、
無意識のうちに自分と同じモチベーションファクターの人を好みやすい。しかし、それでは、
チーム外のメンバーを巻き込みづらくなるのだ。