新型コロナ第三波。辛うじて凌いだ韓国と収束失敗した日本の差は第四波で一層拡大か?

K防疫体制を即座に強化した韓国

K防疫体制を即座に強化した韓国 〈Simon.K.Shin / Shutterstock.com〉

始まりつつある「新たな脅威」

 前回、3月時点で既に北半球全域で非季節性パンデミックが始まっており、南半球では、季節性パンデミックが始まっていることを述べました。  合衆国ワシントン州シアトルにある保健指標評価研究所(IHME)も、いよいよ英国変異株(B.1.1.7)による非季節性パンデミックが地球全体で始まっており、地域による時間差はありますが、3月から7月にかけてB.1.1.7によるパンデミックが生じ、続いて4〜6月以降にブラジル株(P.1)南アフリカ株(B.1.351)によるパンデミックが生じるものと予測しています。  今回本邦において第四波エピデミックSurgeを生じているB.1.1.7は、感染力が在来株の二倍程度とたいへんに強く、子供に感染しやすく、致死率がやや高いという脅威ではありますが、ワクチンの有効性、抗体薬の効果への影響は無い、または少ないとされています。  B.1.1.7の次にパンデミックを起こすとされる、P.1B.1.351ほか、最近世界中に拡散しつつある変異株には、E484K変異を含んでいるものがあります。このE484Kによって、既存の第1世代COVID-19ワクチン*の有効性が大きく落ちるとされており、さらに実は命の危機に瀕していたトランプ大統領(当時)の命を救ったモノクローナル抗体カクテル療法が効果を失うとされています。現在世界各国は、E484K変異を含むウィルスについては、少し先のこととして、B.1.1.7への対策に注力しています。 〈*筆者は第1世代COVID-19ワクチンをファイザー、モデルナ、アストラゼネカとスプートニクVと定義している。また第1.5世代としてノババックス、ジョンソンアンドジョンソン(J&J)を定義している。第1.5世代ワクチンは、E484K変異を持つウィルスに対しても現状で実用的有効性を持つとされる。E484K変異を持つウィルスなどに本格的に対抗する第2世代ワクチンは、各国各社今年秋に完成を目指している。第一世代ワクチンについては、ブースターを二回に増やし、三回接種にすることで対抗しようと治験がなされている。  中国系のシノバック、シノファームなどの不活化ウィルスワクチンについては、開発時期から第1世代、第1.5世代ワクチンに該当するが、情報の透明性が低いために現在は言及していない。但し、最も枯れた技術によるワクチンであり、臨床実績も夏までに8〜10億人を目指しているためたいへんに有望なワクチンの一つである。ワクチンの種類についての概論は、以下のリンク先にわかりやすい簡単な解説記事がある。⇒「ワクチンの種類とその構成物・開発状況」 大阪大学医学部附属病院未来医療開発部 未来医療センター 山岸 義晃〉  前回は、IHMEによる予測と評価をご紹介する前に本邦の現状を論じましたが今回は、引き続き韓国について現状を論じます。常に筆者が指摘している様に、本邦、韓国、台湾は、地勢的に事実上の島国*でありかつ人種、民族、社会・文化的背景がよく似ており、同じ自由主義社会であることもあって、今回のパンデミックについて比較することにたいへんに適しています。 〈*韓国は、38度線(軍事境界線)を隔てて人的・物的交流は絶たれている。また現在北朝鮮は、パンデミック対策の為に国境を閉鎖し鎖国に近い状態で、在平壌ロシア大使館員は、帰国の際に手押しトロッコで出国したほどである。 参照:Russian Diplomats Push Hand Car from North Korea to Get Home 2021/02/26 Bloomberg Quicktake〉  今回は、韓国について論じますが、今回用いるデータは、執筆時の最新版としています。

定点観測2021/03/11韓国

 まず日本、韓国、台湾の2021/03/11現在の統計を比較して行きましょう。
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm,線形,7日移動平均)2020/09/01-2021/03/11

日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm線形 7日移動平均)2020/09/01-2021/03/11/OWID

日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/11

日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/11/OWID

 韓国では、昨年10月から100万人あたりの日毎新規感染者数が増え続け、クリスマス前までに本邦とほぼ同率になりました。韓国では、11月と12月におけるK防疫体制の二度にわたる強化と12/14以降のソウル首都圏域における大規模一般PCR検査の開始(首都圏域におけるクラスタ戦略の事実上の放棄)によって年末から100万人あたりの日毎新規感染者数の減少が始まりました。  当時、筆者の予測では、韓国におけるCOVID-19エピデミックは、何事もなく順調に推移すれば3月末までに収束、夏までには完全終息の見込みでした。しかし韓国では、1月末に通算3回目の宗教団体起因の大規模Spikeが大田と光州で生じ、COVID-19対策が優秀な国の例に漏れず約二週間でこのSpikeを制圧したもののそれ以降、日毎新規感染者数が下げ止りました。その後2/14に始まり2/20に最大となり収束した1月末を上回るSpike以降は、増加に転じています。この2月下旬SpikeをIHMEは、遅行時間から考えて韓国の旧正月(ソルラル)2/11-2/14としてはやや早いのですがこのSpikeの感染発生日の最大日をソルラルの連休第一日の2/11と評価しています。K防疫では、接触者の検査を大規模且つ迅速に行っていますので、感染発生日(ウィルスへの曝露日)から新規感染者として統計に表れるまで概ね7〜10日の遅行時間(本邦は14日程度)です。このことは、韓国では、発症した人を直ちにPCR検査する態勢であることを意味しています。  現在、現在韓国の100万人あたりの日毎新規感染者数は、8ppmと昨年11月末並みであり、僅かですが増加に転じていますので全く予断を許さない状態です*。このためK防疫の段階も、ソウル首都圏域で2.0段階、それ以外の地域で1.5段階と高い状態に留められています**。 〈*韓国の新規コロナ感染者 3日連続400人台=感染拡大の兆し 2021/03/11 聯合ニュース 〈**新型コロナ、新たに488人感染 現行の防疫対策さらに2週間延長 2021/03/12 KBS WORLD Radio
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よく似た状況の日韓が”全く異なる対応”でどういう結果になるか
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