新型コロナ第三波。辛うじて凌いだ韓国と収束失敗した日本の差は第四波で一層拡大か?

日韓ともに出遅れたワクチン接種だったが……

韓国、日本とアジア全体における100人あたりの累計ワクチン接種回数の推移(% 接種回数 線形)2020/12/13-2021/03/10

韓国、日本とアジア全体における100人あたりの累計ワクチン接種回数の推移(% 接種回数 線形)2020/12/13-2021/03/10/現時点でジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)を除くほぼ全てのCOVID-19ワクチンは、ブースター含め二回接種であるため、200%弱で全員接種を意味する/OWID

 第1世代COVID-19ワクチン接種は、日韓共に大きく出遅れました。統計上、本邦は2/17から、韓国は2/25から接種開始*と、本邦が8日先行しましたが、その後のワクチン接種速度は韓国の方が遙かに速く、3/10日時点で韓国は本邦の8倍以上の接種率となっています。 〈*厳重な護衛のなか…アストラゼネカ製ワクチン、韓国での流通「第一歩」 2021/02/25 hankyoreh japan文大統領、コロナワクチン接種現場を訪問…韓国初の接種を見守る 2021/02/26 hankyoreh japan〉  ワクチンの確保量についても韓国は第1四半期(3月末まで)に150万回分のワクチンが納品されることになっており*、これは人口比で本邦での370万回分に相当します。 〈*韓国政府、緊迫したワクチンの確保状況で導入時期前倒し 2020/02/17 hankyoreh japan〉  この150万回分のワクチンは、現状の速度では月末にやや余る程度の量ですから、ワクチン獲得量としては不足気味ですが、3月中に全人口の2.5%程度、医療従事者の半分以上には行き渡る勘定となります。おそらく韓国では、4月いっぱいで全医療従事者にワクチンが行き渡るのではないでしょうか。  合衆国が典型ですが、マス・ヴァクチネーション(大量ワクチン接種)に成功している国は、マス・PCRテストのインフラ、人員、経験があり、その資源をそのままマス・ヴァクチネーションに応用、転用しています。とくに合衆国では、200万検査/日という驚異の実績を打ち立てたその経験と資源をそのままマス・ヴァクチネーションに転用し、連続200万接種/日をこえるという偉業を打ち立てています。合衆国では、5/1以降から希望する全成人に対する一般ワクチン接種が開始されます。  ワクチンは、本邦のように足下を見られてもお金に糸目を付けなければ他国を押しのけてでも入手は可能です。しかしワクチンはそこにあるだけでは全く無意味です。接種しなければ期限が来てゴミになるだけです。  接種開始半月の本邦と韓国を比較するとマス・ヴァクチネーションに必要な態勢を整備してきた韓国と、屁理屈とウソでPCR検査すら拒絶してきた本邦との実力差が如実に表れています。  お相撲で言えば、先日まで怪我で長期休場後復帰の大横綱が合衆国、実力派関脇の韓国、番付外の本邦という実態です。筆者は、20年ほど昔までですが、衛星放送で番付外のお相撲を視聴していました。結構面白かったです。  本邦や韓国では、医療従事者、介護従事者、法執行職員、行政現業職、教師・保育士、介護施設・デイサービス利用者のお年寄りへこそ迅速ワクチン接種をせねばなりませんが、謎々効果*(Factor X))のおかげで一般ワクチン接種を急ぐ必要はありません。優先接種対象でさえ本邦では3千万人程度になると考えられ、せめて韓国程度の実力は求められます。 〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ効果を”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因もそれがどのような現象であるかも不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、この領域では、感染率が当初米欧の1/1000程度に抑えられていたことが謎々効果として可視化されていることである。致命率(CFR)は謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。CFRは、主として医療への負荷によって変動している。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉

IHMEによる予測(韓国)

 それではIHMEは、韓国についてどのように評価、予測しているのでしょうか。本稿執筆中の3/11(EST)にIHMEが予測を更新しましたのでここからは最新の3/11(EST)現在の予測と評価を用います。韓国については僅かに上方修正されています。  なお、本邦については3/6現在に比して3/11現在の予測は、下方修正されています。これについては、後日改めてご紹介します。
IHMEによる韓国における真の日毎新規感染者数の評価と予測(人 線形 感染発生日95%不確実性区間)2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在

IHMEによる韓国における真の日毎新規感染者数の評価と予測(人 線形 感染発生日95%不確実性区間)2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在/IHME

 韓国における8月以降のエピデミックは、8/15光復節におけるサラン第一教会によるゲリラ大規模集会によって激化した第二波、10月はじめのチュソクに始まった「秋の波」第三波、そしてB.1.1.7(英国変異株)によって始まった第四波に分けられており、現在第四波の渦中にあります。  韓国ではCOVID-19ワクチン接種が始まったのが2/26と遅く、現時点で接種率1%程度と僅かですので、第四波にワクチン接種の寄与はありません。しかしながら、従前の非薬理的対抗策、K防疫が有効に機能しており、IHMEはそれを高く評価しています。従って韓国において第四波は、3月中に収束に向かうという予測です。但し、韓国には「秋の波」は来ないというIHMEによる9月時点での予測に反して、11月から12月にかけて第三波が拡大し、予測を大きく上方修正したこともあり、95%不確実性区間(信頼区間)は大きくなっており、最悪の場合、12月並みになる可能性も示しています。但しこれは悪いシナリオ且つ95%不確実性区間の最上限ですので蓋然性は低いものとなります。  IHMEは、韓国では今後南ア変異株(B.1.351)やブラジル変異株(P.1)による第五波が7月までに発生することはないとしています。この予測については韓国では、既にE484K変異を持つ変異株が確認されていること、B.1.351やP.1に対するワクチンの有効性が不明であることから不確実性が高い*のですが、一方でK防疫による封じ込めは大いに期待出来ます。 〈*韓国でコロナ変異株「71日間で182件」拡散…「氷山の一角」2021/03/10 hankyoreh japan
IHMEによる韓国における日毎死亡数の実績と予測(人 線形95%不確実性区間) 2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在

IHMEによる韓国における日毎死亡数の実績と予測(人 線形95%不確実性区間) 2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在/IHME

 韓国における日毎死亡数についてIHMEは、楽観的な予測をしており、最大でも6人/日であり、四月中には収束し、7月までに第五波はないという見込みです。これは、人口比換算で本邦の15人/日に相当し、優秀な数値と言えます。95%不確実性区間上限でも17人/日であり、これは本邦の42人/日に相当します。繰り返しますが、悪いシナリオ且つ、95%不確実性区間上限ですので、蓋然性はたいへんに低いです。
IHMEによる韓国における日毎死亡数の実績と予測(人 線形95%不確実性区間) 2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在

IHMEによる韓国における日毎死亡数の実績と予測(人 線形95%不確実性区間) 2020/08/01-2021/07/01 2021/03/11現在/IHME

 韓国における累計死亡者数について、IHMEは、7/1までに2067名と予測しています。これは人口比換算で、本邦では約5千人に相当します。韓国は、第三波でまさかの約1300人死亡という大きな犠牲をだしましたが、謎々効果とK防疫によって良く踏みとどまったと言えます。  このように韓国は、秋の波=第三波で大きな犠牲を出しましたが、11月12月と適切に対応し、K防疫の評価を高めたと言えます。しかしそうではあっても僅かな対応の遅れが1300人という大きな犠牲となったわけで、エピデミック対策は迅速に行わねばならないという教訓を残しています。  韓国においてもB.1.1.7がドミナント(支配株)となる蓋然性が高いとされ、加えて既にE484K変異を持つワクチンの効きにくい変異株も確認されています。これらの脅威に文在寅政権がK防疫と第1世代COVID-19ワクチンという二枚の盾でどのように立ち向かうか、次の半年で真価が問われると筆者は考えています。  今回はここまでとし、次回は台湾の順番ですが、その前に本邦の情報追加と、前回執筆後に分かった問題点について論じる予定です。 ◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ42:第四波エピデミック(3) <文/牧田寛>
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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