日本と欧米の女性向け「恋愛記事」を比較してみて気づいたこと

男性に「お願い」しなければいけない社会

 さて、こういったNGフレーズを日本と欧米、各メディアはどのように解説しているのか。まずは日本の解説を見てみよう。  「女性を傷つけてしまう」  「女性は隠れた努力を見てほしい」  「口に出さなくても察してほしい」  「言い方次第では嫌に思われても仕方ない」  「女性は女性として扱われたい」  こうしたアドバイスや解説を見ても、「男性に忖度してほしい」というニュアンスは顕著だ。  また、精神論に終始して、なぜ嫌だと感じるのか具体的な理由にほとんど触れていないのも問題だろう。乱暴なまとめ方をしてしまうと、どれも「女のコは嫌がるから気をつけてくれると嬉しいな」でしかないのだ。  欧米の解説を見ると、タイトルと同じく、かなり具体的に理由が言及されている。分量が多いので下記のまとめからは外したが、「化粧には毎日●分がかかる」「●%がレイプ被害に遭っている」など、数字でデータを補完していることも、嫌だと感じる原因についての説得力を増していた。  「避妊具を着けることが当たり前であってほしい」  「男性と同じく、(セックス中に)嫌だと言っているときは嫌です」  「(髪型が変わったことだけ指摘するのは)好きだと口にしない程度ってこと」  「(容姿や体型など)そんなことは知っています。言われるまでもない」  「美容には時間も気力もかかる。そもそも男性のために化粧をしていない」  読者の皆さんはこうした違いについてどうお考えだろう? 恋愛記事の内容ひとつをとってみても、欧米とは男女関係や格差に大きな開きがあるように思えないだろうか。

小さな差別の積み重ねが大きな格差に

 ちなみに、筆者が住んでいるポーランドで女性たちに日本の恋愛記事を読んでいただいた感想は次のとおりだ。 「どれも女性が男性に『お願い』しているような印象です。私たちは平等なんだから、嫌だと思うことは膝をついて頼むんじゃなくて、相手が理解できるようにハッキリ突きつけるべきです」(20代) 「書いている人も読んでいる人もバカなんですかね……。事例はどれもハラスメントですし、こんなことをわざわざ男性に教えなきゃいけないなんて、おかしいですよ」(30代) 「見た目に関してアレコレ言われたくないのは、どこも同じなんですね。日本人女性の気持ちはよくわかります」(20代)  ジェンダーギャップ指数でG7中、最下位の日本。世界中に発信された森元首相の女性蔑視発言は日本国内からも厳しい批判を浴びたが、問題なのはこうした明らかな男女差別だけではなく、我々が日常で見過ごしているミソジニーの積み重ねなのかもしれない。  こうした話をすると、「今はポリコレがキツすぎて息苦しい」という反応を受けることもあるが、息苦しいのはこれまで不当に差別され続け、男性からハラスメントまがいの言葉を浴び続けてきた女性のほうだ。  その多くはあまりにも我々の生活や考え方に染みついており、そうした些細なことの積み重ねが、無意識に女性を差別する構造を作り上げていることは間違いないだろう。 <取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会