全世界で反転上昇。データで明確な「日本の第三波収束失敗」と、迫る英国変異株による第四波の現実性

Morning Commuters Inside A Train Station as Tokyo Region Extends State of Emergency

日本のコロナ対策で不思議なのは、リモートワーク推奨などはあったが通勤電車などのラッシュ緩和には具体的な施策がほとんど講じられなかったこと。第四波で果たしてどうなってしまうのか。Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg via Getty Images

全世界で反転上昇が始まったCOVID-19パンデミック

 北半球での「秋の波」=COVID-19季節性パンデミックですが、感謝祭やクリスマス、年末年始によるによる顕著なSpikeと季節性のSurgeがたいへんに大きな合成波を形成し、北米と欧州で猛威を振るいました。本邦をふくむ東部アジア・大洋州は、謎々効果*によって守られていますが、本邦と韓国では秋の波が第三波季節性エピデミックとして東部アジア・大洋州では特異的に猛威を振るう形となりました。 〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ効果を”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因もそれがどのような現象であるかも不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、この領域では、感染率が当初米欧の1/1000程度に抑えられていたることが謎々効果として可視化されていることである。致命率(CFR)は謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。CFRは、主として医療への負荷によって変動している。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉  韓国は、K防疫体制の強化により12月中旬には制圧の成果が出始め、1月下旬には3月中の収束が見えてきましたが、1月下旬の宗教団体による大規模Spikeの発生後、このSpikeそのものは制圧出来ましたが、季節性Surgeは完全に下げ止まり、二月下旬には反転上昇しています。韓国ではK防疫の緩和が焦眉の政治的課題ですが、既に二月中旬以降、高いベースラインから日毎新規感染者数が増加に転じており、K防疫の緩和は難しいと考えられます。  本邦は、韓国と異なり無為無策であり、忘年会、クリスマスと年末年始の巨大なSpikeによって12月末から1月上旬にかけてたいへんに危険な状態に陥りましたが、菅内閣による1/8の緊急事態宣言(菅緊急事態宣言)における外食産業の営業制限(外食時短)が劇的な効果をあげ、巨大Spikeこそ政府施策とは無関係に自然終息しましたが、季節性のSurgeは主として外食時短によって数週間から1カ月程度の早期収束へと向かいました。しかし、死者数の減少が大きく遅延し、医療への高い負荷がかかったままで2月中旬には日毎新規感染者数が下げ止まり、3月に入り僅かに反転上昇へ転じています。本邦においても菅緊急事態宣言の解除は焦眉の課題となっています。  既に合衆国でも日毎新規感染者数の反転上昇が2月末には見られましたが、3月上旬では再度下げに転じるなどしています。しかしここにきて多数の共和党系州政府によるマスク着用義務の撤廃など規制緩和が拙速且つ急速に進んでおり、3月末からが憂慮されます。  南米はこれから冬に向かうために元々季節性Surgeが始まるのですが、ブラジルのボルソナロ大統領による「コロナはたいしたことない」政策によってたいへんに危険な状態となっています。既にブラジルでは医療がウィルスに圧倒されており*、ブラジルの経済中心であるサン・パウロ州知事であるジョアン・ドリア氏は、「我々ブラジルは、二つのウイルスと闘っている。コロナ・ウィルスとボルソナロ・ウィルスだ。ワクチンを寄越せ。」”Brazil is fighting two viruses – the coronavirus and the Bolsonaro virus,”**とTV演説するなど、騒然とした状況にあります。南米は、これから冬を迎えるブラジルをエピセンターとして状態はよくありません。 〈*Brazil’s hospitals reach breaking point as health minister blames new coronavirus variants 2021/03/01 CNN〉 〈**Brazil covid: ‘We have to save lives before saving the economy’ 2021/03/05 BBC  南半球はこれから冬ですので、感染者数が増加して行くことはやむを得ないのですが、北半球の欧州やアジア、大洋州、北米で新規感染者数がBaselineとしては高い水準で下げ止まり、下げ渋りをみせたり、増加に転じることは、何か特異的な理由がない限り本来は起こりにくいことです。
南米、欧州、北米、全世界、アジア、アフリカ、大洋州とブラジル、合衆国、日本、韓国における100万人あたり新規感染者数の推移(ppm線形)2021/01/01〜2021/03/08

南米、欧州、北米、全世界、アジア、アフリカ、大洋州とブラジル、合衆国、日本、韓国における100万人あたり新規感染者数の推移(ppm線形)2021/01/01〜2021/03/08/百万人あたり新規感染者数の分布(ppm)2021/03/08 百万人あたり新規感染者数の分布(ppm)2021/03/08/OWID

脅威を増す英国変異株。ワクチンナショナリズムの兆しも

 この季節要因の挙動とは異なるパンデミック増進の原因は、昨年9月に英国で発見され、11月下旬から2月にかけてTV演説中のボリス・ジョンソン英首相が時々言葉を詰まらせるほどに英国をたいへんに苦しめた英国変異株(B.1.1.7)による非季節性パンデミックであると考えられており、各国は警戒を厳にしています。  このB.1.1.7は、最初に発見された英国を中心として、欧州全域で猛威を振るっており、欧州では、多くの国が11月以降にソフト・ロックダウン*をしていたのにもかかわらず、ドイツを除く多くの国で11月下旬以降に大規模なエピデミックSurgeが発生しています。 〈*緩やかなロックダウンで、学校の運営継続など社会の機能をできるだけ維持するもので、先の秋以降、多くの国で導入された。英国のティア3ロックダウンが該当する。当初、SARS-CoV-2ウィルスの在来株には十分な効果を見せたが、B.1.1.7には、全く歯が立たなかった〉  1月から2月にかけてようやく欧州でのエピデミックSurgeは収束に向かっていますが、現在イタリアでB.1.1.7によるエピデミックSurgeが始まっており、昨年のイタリアの悲劇を既に3倍上回る規模となり、さらに増進中です。またフランスもじわじわと感染者数が増加しつつあり、たいへんに厳しい状況です*。 〈*“COVID-19 Cases Remain Stubbornly High in France and Italy, Possibly Due to UK Variants” 2021/03/05 Pharma Technology Focus〉  この様な中、欧州におけるワクチン・ナショナリズムは激化しており、イタリア政府は、国内製造の豪州向けアストラゼネカ製ワクチン25万回分の輸出を阻止しました*。 〈*Covid: Italy ‘blocks’ AstraZeneca vaccine shipment to Australia 2021/03/05 BBCイタリア、国内製造ワクチンの輸出を阻止 EU初 2021/03/05 BBC
イタリア、フランス、オランダ、スペイン、ドイツ、英国と日本、韓国、台湾における日毎新規感染者数の推移(ppm 7日移動平均 線形)2020/01/23-2021/03/08

イタリア、フランス、オランダ、スペイン、ドイツ、英国と日本、韓国、台湾における日毎新規感染者数の推移(ppm 7日移動平均 線形)2020/01/23-2021/03/08/東部アジア最悪国の一つである日本であるが、欧州の前には石ころの様なものである。これが謎々効果の威力であり、無為無策の本邦政府にもかかわらずこの冬には欧米比約1/12にエピデミックの威力を抑制している。/OWID

 この様な状況で、合衆国ワシントン州シアトルにあるIHME(保健指標評価研究所)は、合衆国西海岸時間の2021/03/06にCOVID-19パンデミックの評価と予測を更新しました。今回の更新では、月初めのためにいよいよ予測期間が7/1まで拡大され、3月と4月の予測もかなり精度が上がってきています*。今回からIHMEによる3/6更新の予測と評価を用いて第四波エピデミックについて日韓台を中心に論じて行きます〈*IHMEによるCOVID-19予測と評価は、毎週金曜日頃に更新であり、毎月はじめに予測期間が四ヶ月後の1日に拡大される。また通常は毎月はじめに評価と予測の見直しが大規模になされ、予測の下方修正が行われる傾向にある。筆者は、月初めのIHMEによる予測と評価の更新を重要視している〉
日本における日毎死亡者数の実績と予測(人)2020/08/01-2021/07/01〈95%不確実性区間(信頼区間)なし〉

日本における日毎死亡者数の実績と予測(人)2020/08/01-2021/07/01〈95%不確実性区間(信頼区間)なし〉/日本における日毎死亡者数の実績と予測(人)2020/08/01-2021/07/01〈95%不確実性区間(信頼区間)あり〉 日本における日毎死亡者数の実績と予測(人)2020/08/01-2021/07/01〈95%不確実性区間(信頼区間)あり〉/IHME

 但し、予測と評価の前に現状把握が必須ですので、日韓台についての定点観測を二度に分けて行い、その次にIHMEによる最新予測をご紹介します。
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収束に失敗した日本の第三波
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