全世界で反転上昇。データで明確な「日本の第三波収束失敗」と、迫る英国変異株による第四波の現実性

定点観測2021/03/08日本

 いつもの様に本邦と韓国、台湾、アジア全体を観察し、比較して行きます。
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm線形 7日移動平均)2020/09/01-2021/03/08

日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm線形 7日移動平均)2020/09/01-2021/03/08/日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/08 日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/03/08/OWID

完全には食い止められなかった日本の第三波

 本邦では、季節性の第三波エピデミックSurgeが1月末には減衰しはじめ3月末までには収束する見込みでした。しかし日毎新規感染者数は、二月中旬には下げ止まりはじめ、二月下旬から三月にかけて完全に下げ止まり、最近は反転増加の可能性が高いです。残念ながら現状では、昨年11/10時点の水準である8ppmでありBaselineとしては、5月の20倍、9月の2倍と高止まりしており、これは昨年6月時点の欧州でのBaselineに相当します。
日本、韓国、アジア全体における日毎新規感染者数の一週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/08

日本、韓国、アジア全体における日毎新規感染者数の一週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/08
/+で増加・0%で変化無し・―で減少。台湾は、新規感染者数が一桁で、僅かな変動で変化率が大きく変化するので可読性を損なうため入れていない/日本、韓国、アジア全体における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/08 日本、韓国、アジア全体における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/03/08
/+で増加・0%で変化無し・―で減少。台湾は、新規感染者数が一桁で、僅かな変動で変化率が大きく変化するので可読性を損なうため入れていない/OWID

 筆者は、日毎新規感染者数の一週間変化率と二週間変化率*を主用しています。本邦は、2月中旬から減少率が小さくなり始め、3/5以降、僅かに増加に転じています。二週間変化率からも2月中旬から減少率が小さくなっており、今後は長期にわたって増加傾向を維持する蓋然性が高いです。  但し、現時点での増加率はまだ筆者が目安としている+20%未満ですので社会的行動制限の強化や、大量検査による感染者の把握と隔離を行えば短時間かつ低コストで制圧出来ます。 〈*当日の一週間移動平均と前週同日7日間移動平均の間の変化率および当日の二週間移動平均と二週間前同日14日間移動平均の間の変化率。+で増加、0で変化無し、―で減少を意味する。筆者は、基本的に二週間変化率から倍加時間または半減時間(半減期)を算出しており、一週間変化率から傾向を読み取っている〉
日本、韓国、台湾およびアジア全体での百万人あたり日毎死亡者数の推移(ppm  7日移動平均 線形)2020/09/01-2021/03/08

日本、韓国、台湾およびアジア全体での百万人あたり日毎死亡者数の推移(ppm 7日移動平均 線形)2020/09/01-2021/03/08/日本は、1/1に集計漏れを一括計上しているために1/1から7日間の日毎死亡数が跳ねているが、これは前述による統計の乱れである。以前は1/19に計上されていた/大洋州、アフリカ、南米、欧州、北米、全世界、アジアと日本、合衆国、韓国、台湾における致命率(CFR)の推移(%)2020/09/01-2021/03/08 大洋州、アフリカ、南米、欧州、北米、全世界、アジアと日本、合衆国、韓国、台湾における致命率(CFR)の推移(%)2020/09/01-2021/03/08/OWID

 日毎死亡者数と致命率(CFR)*をみますと本邦は、特異な挙動を示しています。まず、発症日から死亡日までの推定される死亡日数が、30日近くとなり、これは本来平均18日であることからたいへんに過大な数値となっています。次に、新規感染者数は、最大値の約1/6迄下がって日数が経過していますが、死亡者数は現時点で最大値の約1/2です。これは医療への負荷が高いままであることを意味しています。また死亡統計か、感染者数統計のどちらかに系統的なたいへんに大きな誤差ないし大きな欠陥がある可能性を強く示唆しています。 〈*CFRとは診断付きの死者数を診断付き感染者数で割ったものである。その為概ね10倍ほどの過大評価となる傾向があるが、実測値として一般的に使われている。これに対し真の死者数を真の感染者数で割ったものはIFRであるが、推定値となる〉  結果として本邦は、1/18以降一貫してCFRが上昇し続け、既に韓国と合衆国を追い抜き、上回っています。  本邦のCFRは、未だに中庸な値となっていますが今の時期に一貫してCFRが上昇し続ける国は公衆衛生と医療の状態が思わしくないアフリカ諸国とフィリピン以外あまり見かけられず、しかもその上昇の程度が本邦は目立って大きいという特徴を本邦はみせています*。 〈*COVID-19パンデミックにおいてもCFRは、パンデミック初期に高い値となり、その後は一貫して減少して行く。これは当初ウィルスの奇襲を受けるために医療が対応出来ずに多くの人が死んでしまうが、その後暫定的であっても標準療法が確立され、次いで薬餌療法の確立、ワクチンの開発が行われ、感染者数に対し死者数が急速に減少するためである。中国や豪州の様に当初大勢の人が死に、その後は感染者発生が良く抑制されている国では、見かけ上CFRが高止まりしている。これは感染者が発生しないために初期のCFRが高いままで固定されているためである〉  本邦は、効果が衰えているとはいえ謎々効果によってCOVID-19パンデミックの威力こそは米欧の約1/10程度*ですが、死亡者数の下げ渋りとCFRの上昇は、医療への過負荷を示しており、更に統計の大きな歪みを示す死者数の異常な遅行もあってたいへんに憂慮されます。 〈*約10ヶ月前は、約1/200であった〉
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市民を犠牲にした無責任な自称「専門家」たちの逃亡
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