千葉県知事選にクラスターフェス主催の国民主権党・平塚正幸が立候補。反ワクチンも主張

なぜ時短営業がコロナ対策になるのか

 平塚正幸は、千葉県庁前で行われた第一声で、さまざまな珍説を開陳していたが、どれも平塚正幸が理解できていないだけである。あまり初歩的な話なので、あんまり教えてくれる人がいないのかもしれないが、平塚正幸の主張に「なるほどガッテン!」してしまう人が生まれているので、一つずつ丁寧に解説していくことにしたい。まずは、平塚正幸の街頭演説をチェックしてみよう。 「8時以降飲食店が休んだら、皆様の健康や安全が守られる。こんな簡単な嘘に騙されてはいけません。我々は毎日呼吸をし、そして、心臓を動かし、生き続けているんです。その間で8時以降に感染しないだろうとか、飲食店に行かなければ健康になれるだとか、あり得るでしょうか。他の目的があると見るのが自然です。権力は常に大衆の行動を制限するように法律を作り、常識をメディアによって書き換えて、今、この2021年があるんです」  なぜ飲食店の営業時間を短縮するのか。それは、居酒屋やスナックなどで会話を楽しむことを制限するためである。なぜランチタイムは良くて、20時以降がダメなのかと言ったら、通常の食事は当然のように「食べる」ことが目的であるのに対し、20時以降の食事というのは「食べる」よりも「しゃべる」が目的になりがちだからである。食事中はマスクをつけることができないため、マスクをつけずに話をすれば飛沫が飛ぶ。そうして感染者が増えてしまうというわけだ。  もしかしたら20時以降であっても、黙々と食べることだけに徹し、「会話の禁止」を条件にするのであれば、営業できないわけではないのかもしれない。ただ、図書館のように静かにしなければならない食事の、一体、何が面白いだろう。  実は、政治家たちの本音を言えば、時短営業なんてお願いしたくない。そう言ってしまうと、まるで政治家たちが国民のために頑張ろうとしているように受け取られてしまうかもしれないが、これは飲食店で働く人たちのためではない。時短営業を要請するとなれば、多少なりとも補償を用意しなければならないため、そこに何一つおいしい利権があるわけでもないのに、税金を投入しなければならないからだ。できるだけ税金は使いたくない。時短営業なんてしたくないのである。  その証拠に、税金を使わないことが何よりも正義だと考えている大阪維新の会の吉村洋文知事は、とにかく一日でも早く緊急事態宣言を解除してもらえるように要請していたほか、宮城県の村井嘉浩知事は「GoToイート」キャンペーンを勝手に再開している。政治家たちは、できるだけ早く飲食店の時短営業を終わらせたいのである。だから、他の目的なんてない。

「コッホの4原則を満たしていない」はデマ

 平塚正幸は、普通の人が知らない「コッホの4原則」という言葉を使うことで、まるでしっかり調べているような印象を与えているが、平塚正幸が述べている「新型コロナウイルスは『コッホの4原則』を満たしていない」というのはデマである。平塚正幸は、何と述べているのか。 「実際、コロナウイルス、これが本当に危険なウイルスであるのかということが、我々はしっかりと見なければいけないわけです。しかしながら、コロナウイルスが危険なウイルスなのか。蓋を開けてみたら、ウイルスが同定されていない。つまり、この遺伝子はウイルスであるというふうに定められていない。『コッホの4原則』という、『ウイルスで間違いないでしょう』という、そういう実験がされて、健康な人の体にこのウイルスがあったら、このウイルスが体の中に入っていない人と比べて、病気になる、重篤な症状になる、そのような実験を繰り返して、初めてこの遺伝子がウイルスであるというふうに同定できるんです。そのような実験、一切されていない中、感染症対策はしなければいけないというふうに一人歩きして、我々はマスクをこれだけ強いられる社会になってしまいました」  コッホとは、1874年に初めて炭疽菌を発見した人の名前である。  そして、「コッホの4原則」とは、まだ電子顕微鏡も、ウイルスの存在も知られていなかった時代に編み出された、「こうすれば菌が原因で病気が起こっていると断定できる」という理論のこと。 ① ある病気には一定の菌が見つかることを証明する。 ② その微生物を分離・培養できる。 ③ 分離した微生物を感受性のある動物に感染させて同じ病気を起こせる。 ④ その動物から再び同じ菌を再分離できる。  今回の新型コロナウイルスで言えば、感染者から「SARS-CoV-2」というウイルスが見つかり、感染者から「SARS-CoV-2」を分離・培養でき、それをマウスやフェレットなどに接種して感染させることができ、マウスやフェレットから再び「SARS-CoV-2」を分離することができる。  こうなれば「コッホの4原則を満たしている」ということになるわけであるが、ご存知の通り、新型コロナウイルスに関する動物実験は世界中で行われている。例えば、東京大学ではハムスターを使った実験で、新型コロナウイルスに感染すると早い段階で鼻の奥にあるニオイを感じる組織が損傷することを確認し、嗅覚異常が起こるメカニズムの解明に一役買っている。  つまり、新型コロナウイルスの「コッホの4原則」は、とっくの昔に満たしており、平塚正幸の言う「ウイルスが同定されていない」や「コッホの4原則を満たしていない」は間違いである。  ちなみに、世の中には「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」のように、動物実験を行うことができず、「コッホの4原則」を満たしていないが、ウイルスとして認められているものも存在する。
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千葉県知事選の情勢を考えても平塚候補の主張を検証すべし
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