とある宗教団体の洗礼を受ける子供の信者、それを見守る信者たちの 中にも幼い信者の姿が
NHKハートネットTVの「宗教2世」のドキュメンタリー番組に対して、鈴木エイト氏が、「カルト問題」の構造を示さないまま「宗教2世」として一般化することへの疑義を論じた。
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NHK、「宗教2世」番組を放送。カルト2世問題を“宗教”に一般化する危うさ
当事者の声を拾い上げ、不十分とは言え問題の存在を広く示してくれた点は評価するし、その点を評価する意見に対して異論はない。しかしハートネットTVの番組内容は、カルト問題に対する問題意識の提示が「不十分」なのではなく「皆無」だった。程度の問題であればいちいち目くじらを立てて批判する必要もないが、極端に一面的であることには問題を感じる。
一方で、当事者である2世自身が発信する意見や概念をどう扱うかという点で、私は鈴木氏とは少々違う意見を持っている。意見の内容は大して変わらないが、「力加減」が違うと言った方がいいかもしれない。
鈴木氏は記事で、当事者が「カルト2世」ではなく「宗教2世」という言葉や概念を提唱している点に違和感を表明している。しかしそこには当事者ならではの問題意識や目的意識があり、メリットもあるのではないか。それも意識しながら、鈴木氏の議論を補完したい。
ハートネットTVの番組での「宗教2世」という一般化の問題について、鈴木氏は上記の記事でこう書いている。
〈具体的な教団名こそ出していないものの、エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)や統一教会(天の父母様聖会世界平和統一家庭連合)を脱会した元2世信者が自身の苦悩や葛藤、親との関係性や自身の子どもへの接し方などを語る内容で、実質的に「カルト2世」の問題を扱ったものだ〉
〈団体・組織が持つ特性として人権侵害や精神的(時には肉体的)虐待が不可避な状態で2世に圧し掛かっているのが「カルトの2世問題」である〉
さらに鈴木氏は上記の記事の中で、番組ディレクターによる〈「親は憎くないのか」という問いかけに当事者たちの答えは「憎くはない」でした〉というツイートを批判している。鈴木氏の批判は〈「親を憎むべきではない」が“正しい2世の心構え”としてスタンダード設定されてしまうことは、2世の多様性の否定になりかねない〉というものだ。私は、どちらをスタンダードとするか以前に、そもそも親子間のみの関係に特化するディレクターの発想に違和感を抱く。
カルトにおける2世問題は、カルトによって人為的に組織的に生み出されたものだ。単なる「親子関係の問題」ではない。