※写真はイメージです photo by cba / PIXTA(ピクスタ)
2月9日、
NHK Eテレの福祉情報番組で「
宗教2世」をテーマとした番組が放送された。「宗教2世」と聴くとお寺や教会などの跡継ぎを巡る事象のことかと思ってしまうところだが、番組で取り上げられたのは全てカルトと指摘される宗教団体の2世信者、所謂「カルト2世」の問題に関わるものだった。当初、取材対象を「カルト宗教の2世信者」としていた番組制作サイドは、なぜテーマを「カルト2世」や「カルト宗教2世」ではなく「宗教2世」と“宗教”に一般化してしまったのか。社会におけるカルト問題の認知が後戻りしてしまいかねない危険な兆候を検証する。
2月9日夜、福祉情報番組・
ハートネットTV(NHK Eテレ)が『
“神様の子”と呼ばれて~宗教2世 迷いながら生きる~』を放送した。具体的な教団名こそ出していないものの、
エホバの証人(ものみの塔聖書冊子協会)や
統一教会(天の父母様聖会世界平和統一家庭連合)を脱会した元2世信者が自身の苦悩や葛藤、親との関係性や自身の子どもへの接し方などを語る内容で、実質的に「
カルト2世」の問題を扱ったものだ。番組では2世の親(元信者)の証言やカルトの2世問題に詳しい社会心理学者のコメントも紹介、SNS上での反響は2世当事者を始め殆どが好意的なものだった。しかし「2世問題」の取材や報道などを行ってきた筆者から見ると、看過できない点が多々あった。
筆者はこれまで週刊誌『AERA』(朝日新聞出版)2018年6月11号に『時代を読む 新宗教元2世信者「目に見えない檻の中に隔離された」「親の付属品」脱け出した』を寄稿、2世問題が「カルト団体」に付随した事象であることを指摘した同記事はAERA.dotに『
新宗教団体2世信者たちの葛藤 オフ会が居場所、難民化の懸念も』として転載されている。
その半年後、2019年1月発行の『一冊の本』(朝日新聞出版)には、スピリチュアル系の2世についての論考『
神格化する胎内記憶少女、繰り返す「感動ポルノ」と商業利用されるスピリチュアル2世』が掲載された。
また、この時期に数回主催した2世問題のトークイベントでは各カルト団体の2世に共通する事象やその背景を探り、問題の本質の可視化を試みた。2019年8月、破壊的カルトの諸問題の研究を行う日本脱カルト協会(JSCPR)が開いた夏季公開講座『子どもの虐待と家族・集団の構図』を企画、モデレーターを務めた。公開講座のテーマは検討を重ねた末に「外部からは見えにくい集団や家族内での虐待。その背景に何があるのか。私たちはどのように連携すべきなのか。具体的な対応や支援の方法を探る」とし、2世問題の核心を明示化するための言葉を慎重に選んだ。