「休館」の貼り紙が目立つ別府市の温泉旅館街。歩く人の姿も殆どなかった。
人口約12万人の別府市は「市内全域が温泉地」であり、日本最大の温泉地であることはもちろんのこと、観光を主業とする都市としても「日本最大」の規模で、あらゆる産業が観光業と結びつくことで発展を遂げてきた。別府市によると「別府市は働く人の9割近くが観光関連産業」であるとしており、それゆえ観光施設のみならず全市域にある百貨店・スーパー・ドラッグストア・家電量販店など殆どの小売店が売り上げ減少に悩まされていることはもちろんのこと、それ以外にも土産品やそのパッケージを製造する企業、ホテルの運営に欠かせない清掃業、クリーニング業、警備業など、市内のありとあらゆる「ほぼ全ての業種」がコロナ禍の影響を受けている。
また、複数の大学や短期大学が立地する別府市は学園都市としての側面も持っているため、観光客の減少によって学生バイトが激減するなか「学生への支援」についても大きな課題となっている。
しかし、「コロナ禍で苦しい全ての者に補償を」といっても、小さな地方自治体が無い袖を振れるはずがない。
別府市では、市内のほぼ全ての産業が振るわない状況では税収の大幅減少は避けられないとして、それを見越した予算編成に転換。2021年度予算(予算案)は財政調整用基金を取り崩すことなく編成をおこなったものの、市立図書館の移転・建て替え計画が延期されることとなったほか、観光施設の整備予算、イベント予算などといった「観光地の基幹産業に影響する予算」もコロナ対策費と市内の事業者支援のために消えており、長引くコロナ禍は観光都市の財政を揺るがす事態となっている。
「GoToで儲けただろうに」――批判を浴びた観光地
市の財政が苦しくなるなか、市内の多くの事業者が何らかのかたちで恩恵を受けていたのが、昨年末まで実施されていた政府による支援策「GoToトラベル事業」であった。
しかし、同事業はコロナ禍の終息がみえないなか、再開の見込みが立っていない。
別府温泉をはじめ、全国各地の観光地からは「感染拡大の終息後にGoToを再開して欲しい」という声も少なくない。
JR別府駅近くの百貨店に貼られていた「GoToトラベル」のポスター。コロナ禍の影響を大きく受けた都市だけに、GoToトラベル/GoToイートには市内の大半の対象事業者が参加していたが…。
しかしその反面、大都市圏や一部のメディアからは「国民が厳しい時期に観光関連産業だけが優遇されることは利権だ」として、さらに地方からは「観光地は大都市圏からコロナを呼び込む厄介な存在だ」として、GoTo政策が、さらには観光地自体が批判を浴びていたという経緯もあり、例え感染状況が落ち着いたとしても観光地からは大々的に再開を望む声を上げづらい状況だ。
ある市民は「
例えGoToが大企業や大リゾート地ほど得をする政策やと言われても、大きなホテルほど(地域に)観光客を来させよったし、そこで働きよん人も多いのに……」と話す。別府市には大手企業の運営・もしくは大手と提携しているホテルや旅館が複数あるが、それらの殆どが2月時点も長期休業したままだった。