維新がぶち上げた「ファクトチェッカー」をファクトチェックしてみた

都合の悪いことは「デマ」扱いするどこかで見た手法

 そして、極めつけは「放置状態」だったということに対する大阪維新の会のファクトチェックが、こちらです。 ”【POINT⑤】 ・健康観察期間は1日2回の体温測定を行っていただくとともに、ご自身で健康観察を行って頂くことを要請している。 ・発熱や咳等の症状が出現したり、症状が悪化した場合は、区の保険福祉センター又は24時間対応の専用ダイヤルに速やかにお申し出頂き、市において検査や受診調整等の対応を行うこととなっている。 ・発熱等の症状以外に、新型コロナウイルス感染症に関する不安やストレスを相談できる【こころの悩み電話相談】が開設されている。 ・健康観察期間中に災害等が発生した場合の避難については自宅等での安全確保を第一としつつ、それが難しい場合に各区に指定の避難所を設置している。”  大阪維新の会によれば、濃厚接触者には「1日2回の体温測定をしてくださいとお願いしているので、放置しているわけではない」としています。体温を測るのはセルフですし、それを報告する場所があるわけでもないのであれば、それを「放置」と言うのではないでしょうか。  しかも、濃厚接触者なのですから、実は感染していて、発症してしまう可能性は十分あるわけです。このツイートをしている市民は、「発症した時にはどうすればいいんですか?」という手続きの連絡もなかったと書いているので、これを「放置」と言わずして何と言うのでしょうか。せめて「万が一の時にはどうしたらいいのか。どういう流れになるのか」を説明する電話がかかってくるのが筋だと思いますが、何もしなかったばかりか、自分たちのオペレーションのダメさ加減をチェックする以前に、「オマエの言ってることはデマだから、ファクトチェックな!」と言って、ツイートを晒して「放置なんかしていない」と言い訳をかましているのです。  これは、コロナ対策は後手後手だけど毎日のようにテレビに出演してアピールしまくる吉村洋文知事を見て「頑張っている」と思ってしまうような情弱な市民に、「なんやガタガタ言われているらしいけど、本当は大阪維新の会のみんなも、頑張っとんのやろ?」と言わせるための作戦です。ファクトチェックと称して述べていることを一つずつ丁寧に見ていったら、本当は何もできていないどころか、ただただ失礼のオンパレード。  最終的に「こういうことを不安に思っちゃうのは、心が病んでいるからなのかもしれないので、我々はしっかり『こころの悩み電話相談』を設置していますよ」と言い出す始末。大阪維新の会が繰り広げている新型コロナウイルス対策に不安を感じるのは、心が病んでいるからではありません。  ただでも、大阪市というのは新型コロナウイルスによる「死者数」が多い自治体なのです。どうして大阪ばっかり死者が多いのか。本当に検証しなければならないのは、どこかの市民のツイートではなく、自分たちの新型コロナウイルス対策がしっかりできているのかという話です。都合の悪いことをデマのせいにするのが「大阪維新の会」のやり方です。

ファクトでもフェイクでもなく「ただの言い訳」

 政治に対して、文句や不満を言うのは、民主主義国家においては当然のことであり、大事な権利です。しかし、実質的に国政政党である「大阪維新の会」が、一市民のツイートに、ましてや、政治に対する不満をツイートしているだけで、デマの要素が一つもないようなものに対し、「ファクトチェック」と題し、まるで悪者のように扱うというのは、いかがなものかと思います。  そもそも大阪維新の会は「ファクトチェック」の意味をわかっているのでしょうか。これは「ファクトチェック」ではなく、ただの言い訳に過ぎません。しかも、検証してみた結果、間違いらしい間違いはなく、どうして放置されてしまったのかを言い訳しているだけで、自分たちがどれだけ無能なのかを難しく説明しているだけだと思います。これは、大阪市民なんてアホばっかりなんだから、濃厚接触者を放置した理由を「もっともらしく」語っておけば、みんなが騙されて「大阪維新の会はちゃんとやっている」と思ってもらえるはずだということなのでしょう。要するに、連日、吉村洋文知事がテレビ番組に出演して、ドヤで精神論を語っておけば、新型コロナウイルス対策を頑張っているように演出できると思っているのと同じです。  現在、大阪維新の会では、ファクトチェックしてほしいものを受け付けています。この調子で第2弾、第3弾を出すつもりのようなのですが、こうなったらファクトチェックとやらが出てくるたびに「ファクトチェックチェック」を出していかざるを得ません。頑張りましょう。 <文/選挙ウォッチャーちだい>
選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材しています。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中
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