CDCのデータによると、新型コロナウイルスのワクチンは、高齢者にも同様に効果がありますが、50歳以上の人は、若い人よりも副作用が少ないです。
具体的には、50~64歳の人の25.3%、65~74歳の人の3.7%、18–49歳の64.9%が副作用を報告しました。原因は明らかではありませんが、加齢に伴う免疫反応の低下の可能性が考えられています。
また、ほとんどの人は2回目の投与後にさらに重い副作用を経験します。
米国では、新型コロナウイルス感染症による多くの犠牲者、経済の崩壊、日常活動の制限、感染の恐れ、新しい変異種の拡大などにより、多くの人がワクチンの接種を望んでいます。カイザーファミリー財団(KFF)による、去年12月初旬の
調査では、71%の米国人が、ワクチンを絶対にまたはおそらく受けると言います。9月の63%から上昇しており、11月のピュー研究所の調査でも同様の傾向がありました。今回のCDCの副作用のデータで、さらに多くの米国人がワクチンの接種を希望することと思います。
さて、先進国で際立って遅れて、日本でも新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まりました。米国では、「それにしても、なぜ、これほど遅れたのか?」「ファイザーのワクチンの承認の遅れに関しては、日本政府は、国内のワクチン懐疑論を克服するために、意図的にゆっくりと行動することを選択したようだ」「国民のワクチンへの不信感、輸入ワクチンの不足などの状況において、展開が遅れるとオリンピックまでに集団免疫は不可能では?」など、メディアを通じて話題になっています。
2020年9月の英医学誌「ランセット」に、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院ハイジ・ラーソン教授らのチームは、2015年から2019年の間に世界149か国からの約30万人にわたる、ワクチンの信頼性に関する最大の研究を報告しました。
報告では、「日本は、ワクチンの信頼度が世界で最も低い国の1つ」にランク(末尾の図参照)されています。
新型コロナウイルスをコントロールするには、効果的なワクチンの集団接種が鍵になります。日本でもワクチンの信頼性が高まり、積極的に接種する人が増えることを期待します。
※2015年11月と2018年11月のワクチンの安全性に対する認識。ワクチンは安全(A、B)、ワクチンは重要(C、D)、ワクチンは効果的(E、F)、と強く同意している回答者の割合(%)。(引用:The Lancet;Vol 396, Issue 10255, 26 Sep 26, 2020 , Pages 898-908)
強く同意している回答者の割合(%)
2015年11月:ワクチンは安全である。
2018年11月:ワクチンは安全である。
2018年11月:ワクチンは重要である。
2018年11月:ワクチンは重要。
2015年11月:ワクチンは効果的。
2018年11月:ワクチンは効果的。
<文/大西睦子>
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。