shutterstock
なかなか感染者が減り切らない新型コロナウイルスですが、こうなっている原因の一つに、いまだ「コロナはただの風邪」とか「PCR検査は無駄である」と言い張ってきかない人たちの存在があります。
例えば、日本のPCR検査がなかなか広がらず、「先進国」を自称しながら、検査数で世界159位に甘んじているのは、テレビに出演する言論人を中心に「PCR検査抑制論」を語る人が多く、おまけに「コロナはただの風邪」だということを広めて歩く人たちがいるからです。こういうことを言っている人たちの多くは、「テレビを見ると洗脳される」と主張し、テレビや新聞で語られていることは嘘で、ネットで仕入れた情報だけが正しいのだと本気で思っています。いろんな情報の中から真実を精査するのではなく、ネット上で「コロナはただの風邪」だと語らう人たちの情報だけが正しいと考え、持論が補強されているのです。
そして、この「コロナはただの風邪」だと主張する人たちの間で出回っているPCR検査の間違った情報が、最近は子供たちに悪影響を及ぼしかねないところまで来ていることがわかりました。
子供たちの安全を守るはずの戦隊ヒーローが、子供たちの健康を脅かす危険な存在になっているのが、北海道や茨城県を中心に活躍する「
舞神・双乱龍(ぶじん・ソーランドラゴン)」です。新型コロナウイルスなんて、大したことないのに大人たちが恐れ過ぎだと主張する動画をYouTubeにアップするも、最近のYouTubeは新型コロナウイルスにまつわるデマには大変厳しいので、いきなりのBANになってしまったのですが、現在は規制の緩いニコニコ動画に再アップし、この動画が再び見られています。
彼らの主張によれば、新型コロナウイルスよりインフルエンザの方が圧倒的に感染者がいるのに、新型コロナウイルスを指定感染症として扱うのはバカげているというものです。
しかし、インフルエンザと同じ、もしくはインフルエンザより大したことのないウイルスだったら、世界中でこんなに一生懸命ウイルスと戦う必要はありません。新型コロナウイルスはインフルエンザよりも毒性が強く、感染力も高いので、マスクをしたり、手を洗ったり、飲食店に時短営業の協力をしてもらったりして、ありとあらゆる手を尽くして、ようやく今の状態に抑え込んでいるのです。それでも東京や大阪の病院は新型コロナウイルスの感染者で埋め尽くされ、本当だったら入院しなければならないレベルの人たちが病院から追い出されている状態です。逆に、インフルエンザではここまで一生懸命マスクをつけなくても、こんなに病院がいっぱいなって、バタバタと人が死んでいくようなことはありませんでした。努力した結果の数だけを見て「インフルエンザよりマシだ」と言ってしまうのは、そこらへんのチビッ子たちよりも頭が悪いです。
さて、日本ではPCR検査をめぐって、「日本はサイクル数(Ct値)が高すぎるので『偽陽性』が出やすい」というデマが出回っています。こじらせているご当地ヒーローも、そもそも「Ct値」について十分に理解しておらず、ネット上で出回っているデマを鵜呑みにして語っていると思うのですが、脳味噌のサイクル数が同じくらいの人たちが「さすが!」と言ってしまうので、ますます地獄が広がっています。
そもそもPCR検査というのは、非常に「偽陽性」が出にくいことで知られる検査方法です。ご当地ヒーローの言う「サイクル数が高すぎる」という話は、単純に「どこまで精度の高い検査をするのか」という話に過ぎず、本来、日本はなるべくウイルスを見逃さないように「精度の高い検査をしている」のですから、喜ぶべき話のはずなのです。精度の高い検査をしているだけなので「偽陽性」が増えているわけではありません。むしろ「偽陰性」を減らす作業をしているのです。