日韓台三カ国でそれぞれエピデミックの状況は異なりますが、それぞれ一番たいへんなときは凌ぎ、春に向けてエピデミックの制圧を継続しています。しかし昨年、英国で発生した
変異株(英国変異株)と南アフリカで発生した変異株(南ア変異株)が世界で蔓延しつつあります。
英国変異株は、ワクチンや薬の効果が大きく落ちることは無いとされますが、たいへんに感染力が強く、子供に感染しやすい特徴があります。英国変異株は、既に本邦や合衆国では市中に入り込んでいます。英国と合衆国では倍加時間が10日と報じられており、合衆国では三月中には在来の株を英国変異株が置き換えてしまい、大きなエピデミックSurgeが発生する可能性が懸念されています。IHMEのエピデミック予測を見ると2月下旬から3月にかけて英国変異株によるSurgeが起こるとされています。
南ア変異株は、ワクチンやモノクローナル抗体が無効化されたり効きが悪くなっており*且つ、感染力と致命率が高くなっているとされます。南ア変異株も既に合衆国と本邦で市中感染が始まっていると考えられ、合衆国では2月8日現在、37州で700名、うちフロリダ州で200名の感染がCNNにより報じられています。合衆国ではウィルスの遺伝子追跡能力が英国に比して低く、既に未発見の市中感染は相当な数に上ると警告されています。なお、本邦ではPCR検査抑制によって、合衆国より遙かにウィルスの遺伝子追跡能力が低く、ウィルス変異株の市中感染に対して実態把握ができていない状態と言って良いです。
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南ア、アストラゼネカのワクチン接種を停止 変異株に効果小さいとの研究受け 2021/02/08 BBC〉
本邦でも遂に南ア株の感染者が自宅検疫中のアフリカからの帰国者とその濃厚接触者から発見されています*。本邦の空港検疫は、10月までに
PCR検査から抗原検査に切り替えられましたが、非常に精度が低く、偽陰性で相当な割合のウィルス感染者を見逃す状況で、ウィルスにとっての大勝利ゲーム・チェンジャーになっています。その為、既に南ア株感染者は本邦市中に相当いると筆者は考えています。なお、本邦の空港検疫は既に
全空港で精度の著しく低い抗原検査へ切り替え済みとのことです。
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南アフリカ型変異株に2人感染 神奈川で初、50代女性と10代男性 2020/02/05 東京新聞〉
IHMEは、
最悪事例として本邦で4月から6月以降にかけて大規模な非季節性エピデミックSurgeの発生を予測しており、強く警戒を要します。
IHMEによる真の日毎新規感染者数*の予測(2021/02/04)*検査による新規感染者数では無い/IHME
感染力が強く、子供にも感染する力が強いとされる英国変異株は、既に11月には本邦市中に入っており、英国と合衆国では倍加時間が10日ですので、本邦でも2月下旬から3月にかけて既存株を置き換える可能性があります。感染力が強いということは謎々効果を消耗させる力が強いという事で、謎々効果への依存が強い本邦では防疫体制の大幅強化が必要と考えられます。
とくに第1世代ワクチンの有効性が大きく下がると見込まれる南ア変異株については現時点ではクラスタの発見と制圧が極めて重要となります。
ところが本邦は、1月のクリスマス、年末年始Spikeで保健所が圧倒され、クラスタ追跡の要である積極的疫学調査を関東などで事実上放棄しています*。これは南ア株に対して丸腰と言っても良い極めて危険な状態であり、可及的速やかにクラスタ追跡能力の再建強化が求められます。
〈*もっとも、本邦ご自慢のクラスタ戦略は昨年早期の段階で崩壊しており、実のところ「空想としてのクラスタ戦略」でしかない。今年一月に、張りぼてとは言え、積極的疫学調査を放棄したことにより、本邦は名実ともに丸裸となっている〉
次回は、今回言及した本邦統計の異常などについてより詳しく論じていく予定です。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ38:第三波エピデミック定点観測(3)
<文/牧田寛>