データでわかる、緊急事態宣言の効果と延長への評価。その一方で空港検疫のザルさの反面、迫りくる変異株の脅威

緊急事態宣言の効果があった日本。延長は正しい判断

【日本】  本邦は、日毎新規感染者数が1月中旬まで急速に増加し、謎々効果が3月にも消滅してしまうことが予測されるほどにたいへんに先が危ぶまれる状況になりました。しかしこれは、一過性且つ社会活動を起因とするクリスマスと年末年始連休によるSpikeが原因であって1/21〜25に自然終息(通過)しています。しかし季節性の第三波エピデミックSurgeは1月中上昇基調であったため、対策をせねば3月にも本邦は南米並みの深刻な事態に陥る可能性がありました。  本邦では1/8に菅内閣により緊急事態宣言が発表され、一部の都道府県を対象としながら11都道府県まで順次拡大した後2/7まで継続し、その後は対象を縮小しながら3/7まで継続する予定です。本邦では、新規感染者が統計に現れるまでに14日遅行しますので実質的に緊急事態宣言が機能し始めた三連休明けの1/12から14日後の検査に相当する1/27*以降の統計から緊急事態宣言の効果が現れました。菅緊急事態宣言は、移動傾向(モビリティ)に全く影響がありませんでしたが、一方で外食産業に対する20時以降の営業自粛を求め(外食時短)、経済支援などの実効性も伴ったこともあり大きな効果があったと考えられます。筆者の予測では、何もしなければ日毎新規感染者数が3000〜4000人/日の帯域で漸増して行くはずであったものが、1200人から2600人の帯域まで減少しており、2/9現在の統計では更に減衰が見込まれます。 〈*1/27現在の統計は、1/26の検査結果を示す。〉  本邦における新規感染者数の推移には、社会性且つ一過性のSpikeが通過した直後から外食時短の効果が現れ、季節性のSurgeは減少に転じており、2/8現在で11/24の水準まで戻っています。これはIHME(保健指標評価研究所)による本邦に於ける季節性Surgeの極大を2月上旬とした予測より季節性Surgeの収束傾向への移行が一週間前倒しとなるほどに大きな効果を示しており、屋内営業のレストランがスーパースプレッダである*という昨年5月から指摘されてきた海外での既に一般的な知見を証明したことになります。 〈*アンソニー・ファウチ博士らは、昨年5月頃から屋内営業のレストランが深刻なスーパースプレッダであると警告を行っている。一方でCDCはレストランの屋内営業を継続するための様々な手法を公開してきているし、謎々効果のあるタイなどでは、定員が半減するものの大衆飯屋の屋内営業を可能とする工夫が一般化するなど、それぞれの実情と文化に応じた外食産業の維持が実践されてきている。本邦の様なノープランは珍しい〉  ここで油断して社会的行動制限を緩和すると元の木阿弥になることも昨年夏には全世界で共有されてきた知見であり、菅内閣による緊急事態宣言の一ヶ月延長はきわめて正しいものであると言えます。くれぐれも緊急事態宣言解除と緩和は、焦らず保守的に行ってほしいものです。まさに急いては事をし損じるです。  なお、既にクリスマスと年末年始のSpikeは通過しており、今週後半からは実効再生産数R0*が季節性Surgeの動向を評価することに使えるようになります。 〈*実効再生産数R0とは、ウィルスの増殖の程度を表す数値で、一定期間にウィルスが増えればR0>1となり変化無しでR0=1、減少でR0<1となる。このためウィルス対策の政策評価に使われることが多く、昨年5月頃までは海外報道でも頻繁に目にしたが、夏以降使われることは本邦を除き殆ど無くなっている。これは、エピデミックの波はSurgeとSpikeの二種類の波の合成波であり、実効再生産数R0は、しばしば突発性且つ一過性のSpikeによって混乱し、判断材料にならないためであると考えられる。実効再生産数R0算出の数式は、東洋経済オンライン紹介の西浦博博士によるものがよく使われている。〉  本邦は、日毎新規感染数で東部アジア・大洋州においては、マレーシア、インドネシアに次ぐワースト3の東部アジア・大洋州三大コロナ駄目国家ですが、アジア*全体の100万人当たり新規感染者を近日中に下回るまで減少する見込みです。現在の半減時間(半減期)は、20日程度ですから、現状で推移すれば3月末までには10月上旬の状態まで改善すると見込まれます。  本邦に於ける死亡者数は、なかなか減少に向かわず、2/5〜2/7にかけて減少に転じた可能性があります。現在、これがよくわからないことで、本来より減衰に転じる日が大幅に遅れています。  COVID-19による死亡は、発症日から平均18日後です。また感染発生日から5日後が発症日ですので、感染発生=ウィルスへの暴露から平均して23日後に死亡します。したがって例えば年末年始のSpikeの場合は、遅くとも1/27迄に極大に達し、その後は減少に転じる筈です。ところが実際には2/5〜7日に減少に転じていますので10日前後、死亡者数の減少が遅れています。これは明らかに異常な値ですので実際に何があったのかを検討せねばなりませんが、今のところ何故こうなったのか全くわかりません。筆者はこの統計の異常をきわめて重要視しており、分析に着手していますので、今後途中経過を含めて順次ご紹介して行く予定です。 (2021/02/10追記)  2021/02/10更新のOWIDでは、本邦の日毎COVID-19死亡数は、安定して減少傾向に入っており、一週間・二週間変化率も減少を示しています。この傾向が続けば、今後二週間をかけて本邦の医療への圧力は急速に軽減してゆくと考えられます。
日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎死亡者数の推移(ppm, 7日移動平均, 線形)2020/09/01-2021/02/08

日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎死亡者数の推移(ppm, 7日移動平均, 線形)2020/09/01-2021/02/08/日本は、1/19に誤った大きな数値が入力された為に1/19〜1/25の7日間の数値が跳ね上がっている。現在厚労省のオープンデータ は、正しい値となっている。日本は、2/5〜7にかけて死亡者数が減少に転じている/OWID

COVID-19におけるウィルスへの暴露からの時間経過

COVID-19におけるウィルスへの暴露からの時間経過/作)David R. Liu Ph.D., Harvard Univ./ 訳)Koichi Kawakami Ph.D., National Institute of Genetics

落ち着きつつも気を緩めない韓国、台湾

【韓国】  韓国は、一時日本に肩を並べるほどに状態が悪化しましたが、11月と12月に引き上げられた求められる社会的距離と、ソウル首都圏における大規模一般PCR検査*によって12月中旬以降、収束に向かいましたが、1月に入り収束傾向が行き詰まり、更に1月末に大田と光州の宗教施設で発生したSpikeによって危ぶまれましたが、二週間ほどでSpikeの制圧に成功しています。ニュージーランド、中国、ドイツ、台湾などのCOVID-19対策が成功している国では、局地的なSpikeが発生しても概ね二週間で制圧してきていますので今回韓国でもSpikeの制圧に成功したと言えます。しかし新規感染者数の下げ止まりは解消出来ていません。筆者は、クラスタ戦略による季節性Surgeの制圧が順調に進んでいない以上、大規模一般PCR検査を釜山、光州、大田、大邱に拡大し、市中感染者の隔離と治療を行う必要があると考えています。筆者は、そのようにしてニュージーランドや台湾並みに国内からCOVID-19を一掃することが韓国では可能と考えています。 〈*本邦では、「検査をしても感染症対策にならない」という詭弁を垂れ流す国策翼賛エセ医療・エセ科学デマゴーグが跋扈している。当たり前だが、検査によって市中感染者を発見し、隔離、接触追跡、対症療法を含む治療を行う。WHOのテドロス事務局長がこの1年間繰り返してきた“Test, Test, Test and Trace”とは極めて当たり前のことで小学生にも理解出来る理屈である。この小学生にも理解できる理屈を否定し、行ってこなかったのが本邦である。この最悪の医療デマゴーグ達を筆者は、Twitterハッシュタグ #Mアノン, #Manonとして公開途上である〉  韓国のお正月は、旧暦の2/12で、旧正月(ソルラル)の連休は2/11〜2/14です。このため、求められる社会的距離を旧正月まで現状のまま緩和しないとしています*。 〈*韓国「夜9時以降営業制限」に首都圏の自営業者「不服」…開店デモを予告 2021/02/08 hankyoreh japan【台湾】  台湾では、国内感染者が散発的に発見されていますが、それにより国内市中でのPCR検査数を増やし、市中感染者1人を見つけるために1000〜3000人規模のPCR検査をしています。この数値は、ニューヨーク州などでCOVID-19を制圧後、掃討する際に必要とされた経験的値で、これによって台湾では市中感染者を洗い出していると言えます。  台湾では2/10〜2/16が春節(旧暦のお正月)の大型連休で、台湾の保健当局は、市民に対して春節の帰省を控えるなど呼びかけています*。 〈*春節を前に、ゾンチャイ(總柴)が防疫を呼びかける動画中華民国衛生福利部(台湾厚生省)Tweet
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世界中に伝播し、蔓延しつつある変異株
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『日本を壊した安倍政権』 2020年8月、突如幕を下ろした安倍政権。 安倍政権下で日本社会が被った影響とは?
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